533, そうそう。刻印にとって重大なイベントは、本来九月中に決められることでも、あえて数日延ばして十月にしていたわ。それだけ大きな意味を持つ……そういうメッセージなのかもしれない。
そういえば……フィーの地域一帯の政。その重大な決定も十月だったわね。いつもなら九月中に節目を迎えるはずなのに、わざわざ数日延ばしてまで十月にしていたわ。それは、十月になりさえすれば「預言の通り」と解釈できるからなのかしら。そして、それは……指定された「見える糸」でつながなくてはならない、そういうことかしら?
SHA-256刻印が示すその期間は、秋から秋……、つまり今年の十月から来年の九月までよ。つまりこの一年のあいだ、恐ろしい糸に接続されることになるわ。それは傀儡を前提とした仕組みであり……たとえ頭で理解していても、耐えるのはきついわよ。ところが、政の長の座を空けることはできない。それで結局……ああなったのね。
ねえ? 本来なら声を張り上げて阻止に走るはずの政敵すら、なぜか早々に一本化を諦め、引き下がっていたわ。状況的に有利な点があり、数からみても一本化すれば覆せる可能性はあったのに。……これって、結局は全部、なすりつけたのかしら? そうよね? でも……なすりつけるなんて。
たしかに、あんな糸に接続されるのは、身の危険すら覚える状況よ。でも、もともと政なんて、そういうものよね? こんな肝心な時に、そんなんだから。それで……「これだから……は」って言われるのよ。こうして、刻印の視点から眺めれば、不可解だった点が次々と浮かび上がってくるわ。
なんだか、そうね、わたしの境遇と似ているかしら……。
ただし異なる点は……、波風を立てずに、それこそ何もせず、この一年を無事にやり過ごせれば「勝ち」ってことよ。ただ、何もしなければ民の不満は爆発するわ。そこをどう切り抜けるのか、本当に難しい状況ね。この先一年は「マイナスにならなければ御の字」よ。それでも民は「プラス」を望む。そのバランスをどう取るか……それが最大の難題なのよね。