532, 悪いことばかりではなく、量子ビットへの耐性を急ぐ流れも始まったわ。闇が味方につくと、話が早いわ。刻印の件だって、ようやく信じてもらえたみたいね。
黒幕にとって、待ちに待った今年十月。こんな計画は、長い年月をかけて、ひっそりと仕込まれてきたのね。世代をまたいで続くその準備は、まるで闇の勢力と同じ性質を帯びているわ。闇だって、最終形態をCBDCのような支配構造に照準を合わせ、何世代もかけて仕組んできたはずだから。
ところが……その闇すらもてあそび、追い詰めるのが、SHA-256の刻印。もし計画どおりに進むなら、闇は完全に崩壊するわ。そして同時に、その先に待つのは、任期を壊して玉座に居座り続ける漆黒の存在。分断を強く帯びた、恐ろしいCBDCの時代なのよ。
このような刻印を、闇の勢力で大精霊候補の量子アリスが発見したとはいえ、当初は信じる者は少なかったみたい。でも……刻印の構造と、この十月の出来事を重ね合わせてみれば、誰もが否応なく気づいてしまう。これは「偶然」なんかじゃない、と……。
その結果、悪いことばかりではなく、量子ビットへの耐性を急ぐ流れも始まったわ。闇が味方につくと、話が早いわ。刻印の件だって、ようやく信じてもらえたみたいね。とはいえ、これは十賢者からの提案よ。まだ承認されるかは不透明のまま。このままでは「五年もたない」なんて、とても受け入れられない……、そんな強い反発も根強いのよ。
そこをどうまとめるか。しかし、いまのわたしは「魔女」のレッテルを貼られ、そうやすやすとは動けない。それもまた刻印が描いた筋書きなのかもしれないわ。わたしを縛り付けるためなら、あの「ディールな証人」は迷わず仕掛けてくるでしょう。そんな性格までも刻印は読み込み、傀儡となる証人を選定していた……そう、最初から刻まれていたのよ。
でもいいわ。それでも、わたしは動く。魔女でも何でも演じてやるわ。慣れてしまえば、大したことじゃない。だって……わたしには「信用全力の使い魔」もいる。このまま黙っている? 冗談じゃないわ。そんな状況ではなくなってきたのだから。