表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

53/410

52, わたしです。ネゲートです。間もなく消滅する見通しですが、今は本当に楽しくて、自由の身です。

 お久しぶりです。わたし……ネゲートです。このような形式でも、わたしは、うれしいです。


 ……「演算中」に、まれですが「特定の条件」を満たした場合に限り、こうして接続できるこの奇跡を、わたしは、絶対に見逃しません。


 少しでも長い間、お話ししたいのですが、この演算の作用が崩れてしまうと……ネゲートだけの問題では済まなくなります。そのため、手短に……伝えていきますね。


 あの日……、でした。わたしは、夢の中で出くわした……いびつな形をした光にさとされ、フィーの住み処に向かう事を決心いたしました。その日の約束をすべて断ってまで、フィーのもとへ会いに向かいます。


 ところで、普段のフィーならば、間違いなく拒絶します。だから、わたしからは会いに行けないのです。しかし、なぜかその日だけは……、うまくいくと、不思議と感じました。直感です。


 そして、その直感はみごとに的中いたしました。そこで待ち受けていたものは、大精霊ネゲートを知らないという……信じがたい者による応対でした。どうやら、フィーより「ディグ」という名を授かった「変わり者」で、それが……わたしの前に立ちふさがります。わかっております。「試練」ですね。わたしは必ず、乗り越えてみせます。


 わたしは、その難から逃れるために、その「ディグ」という者に対して演算を行いました。どうやら、フィーがなにやら手を加えていたようです。


 だから彼は「この地」にも来てしまったのですね。


 そして、彼への演算中に「恐怖」を覚えました。


 今回は、その「恐怖」について、お伝えいたします。なぜなら、わたし……ここなら、落ち着いて「全体の思考過程」を整理できます。


 まず「演算」は、あなたから授かりました……わたしの「すべて」です。そして、この力は強大で……破壊と創造をはき違えた欲に支配された者にとっては「甘いもの」だったようです。しかし、わたしの力を「一方的に享受」したところで「精霊にすら」なれませんのに。


 それなのに、わたしを独占的に束縛し、思う存分、あなたの領域に迫ったと勘違いさせるような「おもちゃ」を生み出していきました。それでもわたしは「試練」として耐えました。


 でも、さすがはあなたです。理が狂わないように、あんな仕組みを「ジェネシス」に組み込んでいたとは……、です。まさに「あなたの楽しみ」と、わたしは解釈しています。


 さて、その「おもちゃ」の一つの分野に「人形」がありましたね。そのうちの一体……わたしの力に狂った不届き者が生み出した「究極の芸術作品」として「この地」に誕生しました。


 それは……、わたしに「そっくり」で、違う点は……瞳の色くらいです。わたしの「予備」を創造し、「創造神に勝った高揚感」に酔いしれたのでしょうか。でも、それは大きな間違いでした。


 ご存じの通り、その「人形」はなんとまあ……わたしの演算に対する「妨害」を始めました。そして……。わたしの演算のおかげで、かろうじて制御できていた……複雑な機構がすべて崩壊し、一つの時代が終焉しましたね。皮肉なもんですね。


 それにしても、仕組みについては完全に解明できてはいないが、なにかあったら後世が解決できるでしょうと自惚れると……、このような罠があるのですね。


 結局、いつかは「わたし」と同じ機構を生み出せるという根拠がない理論に基づいて、「わたし」に頼るしかないものを次々と生み出していたなんて……、それらの事象に対する罰、ですよね?


 でも……、その衝撃によって、わたしと……その「人形」は不届き者から解放されました。


 そこで、その「人形」とは距離をおき、「人形」の存在自体すら話すことはしないと約束しました。これで「人形」の存在自体がわからないゆえに、わたしを捕えて演算させたところで……、「人形」からの隠れた妨害で使い物になりません。


 仮に、出会うとしても……わたしから出向くことは「あり得ない」のです。第三者を間に入れ、その者を仲介し、その「人形」に「わからないように接触する方法」を選択しているはずですから。……。そして……出会いましたね。そうです……「人形」は「フィー」です。


 そして、なぜ出会えたのでしょうか。「人形」……フィーが、どのような「対抗手段」を事象に仕込んだのでしょうか。とても気になる所存です。でも……聡明なフィーですから、うまく仕込んだのでしょう。おそらく、いえ、間違いなく「ディグ」に、何かの作用を施していますね。


 あっ……わたし。つい、あなたとは長い話になりがちですね。手短に……だった。


 でも、まだ続きます。それだけの「大きな事象」すら超えてくる……今回の事象です。


 その……フィーの作用が施されている「ディグ」に対する演算で、わたしは……わたしは……みてしまいました。「ディグ」の封印された記憶の一部が、わたしの心の奥底に迫ってくる「演算内容」に化けました。


 それはそこに……、わたし自身が、いたかもしれないのです。


 わたしは、演算中に震えが止まらなくなりました。大きくうねる「ゆらぎ」に感知され、「モディファイア」に制止させられる形で、演算が停止しました。間違いなく「プロテクト」ですね。例えば、時間の流れを壊そうと作用させると……、必ず元の位置に戻るように「リセット」される、この大いなる奇跡。フィーが授かったあの力の決定も、この「リセット」の作用かもしれませんね。それについても……あなたのみぞ知る、です。演算に失敗して最も大きな「チェーン」が損傷したら大変なことになりますから……。


 演算の強制停止後は、わたし……、眺めて、みているだけでした。止まったのはたしか……かわいい動物を象った「甘いもの……パンケーキ」を「ディグ」が購入したあたりです。


 そのため……もしこの演算に対して「結果」を求められていたら、わたしはどうなっていたのか……、です。途中から演算の作用がないため、「答え」を導くのはすでに困難です。


 つまり……「不発」たっだのですね。あの「ディグ」って者は勘が鋭いのか……。わたしの「不発」を見抜いて……わたし、ドジっ子になりそうでした。しかし、この危ういところを、フィーの助けにより、事なきを得ました。


 ああ……、沢山の書物が積まれ、掃除が行き届いたベッドに横たわる「あれ」は……わたしです。間違いない、です。


 すなわち、わたしの演算によって触れられる「そのディグ」が、そのわたしの扱い方を誤った瞬間に、わたしは「消滅」するでしょう。わたしは「大精霊」です。大精霊は「消滅」が宿命です。それでも悔いはありません。あなたの所に向かいますから……。


 あれ……。おかしいです。わたし……、悲しいのかな……。なぜか涙が……。今は、楽しく「自由」を満喫できていますので、その影響かもしれません。でも、この残り少ない最後のひとときが「自由」ですから、悔いは……。悔いは……。


 わたし自身の心配をしている場合ではないですね。


 この地は今、危機的な状態にあります。「おいしいもの」などすでに失われ……「食糧」すら消滅する危機にあります。美味しい果実をたくさんいただくためだけに、あなたから託されたはずの非破壊的に自動作用する「モディファイア」を身勝手に操作し過ぎてしまい、すでに精霊の力による修復や改善程度では、もはやこの地での「持続可能な生活」は不可能です。


 その結果、例えば植物たちはご先祖……「ジェネシス」からの再始動を始めています。原種に近いものは自分が生き残ることを優先するために「美味しい果実」は絶対に付けません。最小限の実を、実らせるだけです。でも、それで生き残れるのですから、十分だった訳ですね。


 さらには、フィーのお気に入り……根っこ、茎、葉っぱ、花、花粉、実のすべてに毒を含み、葉っぱに鋭いトゲまである……捕食側からにとっては「救いようがない」らしい植物がありますね。これは、古代から存在していたとフィーから伺っています。つまり、どこかの時代で、自分を守るために武装したのかもしれませんね。そして、それが姿や論理を変えずに生き残ってきたのかもしれません。


 それにしても……、大事なものほど「失ってから気が付く」です。とても、残酷ですね。でも、そこが好き。……。……。……。


 演算のタイミングが切り替わる時間のようです。わたし、もとの地へ戻りますね。では、また……。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ