528, どうせ……、そのような傀儡たちは先に逃げるのでしょう。そう、いつだってそう。それなら、その動きに追従することよ。それだけが唯一、自分の身を護る術になるわ。
闇の勢力をわたしの側に取り込めたのは良かったわ。でも同時に、懸念していた空間の扉……その幕が開いてしまった。そこは、穴だらけの深淵。わたしが恐れていた、計量の壊れた空間へと接続されているわ。
その空間では、ノルムという概念がただの数字に堕ちる。構造が崩れ、計り取ることができない。そして……そこでの、そのノルムとは何かしら、ね?
もうそれは……。単純に掛けたり割ったり、足したり引いたりしてはならないのよ。そういうのは、正常な空間のときだけ意味を持つわ。壊れてしまえば、ただの「よくわからないもの同士の演算」ってこと。結局、そこから出てくる値なんて、なにか論理的にはおかしいはず。そう感じるのは、正常な計量を前提にしているからよ。
そのとき、なるようにしかならない。ただ、最も影響が小さなものを恣意的に抜き取って数字として出す。ただ、それだけ。だから、その値には何とも言えない矛盾が宿るわ。
それで……、そこに便乗してCBDCを押し込んでくるのかしら? たしかに、混乱こそが最大のエネルギーであり、それを直に管理下に置きさえすれば、あとはどうにでもできるわ。あちらの準備も整えておいて、ここにぶつける。それも刻印の狙いってことね。
でもね、それでも本能には逆らえない。どうせ……、そのような傀儡たちは先に逃げるのでしょう。そう、いつだってそう。それなら、その動きに追従することよ。それだけが唯一、自分の身を護る術になるわ。