525, やっぱり……刻印は未来を封じ込めていた。わたしたちは、その影の中を歩いているにすぎない。そういうことね。
やっぱり……刻印は未来を封じ込めていた。わたしたちは、その影の中をただ歩かされているにすぎない……そんな思いとは裏腹に、この時間を大切にしたい気持ちもあるわ。甘さと苦さが交差するひとときが、淡々と過ぎていく。
さて。ボタンが押されて現れたのは……眠そうな顔の量子アリス。けれど視線は、まっすぐコンジュ姉に向けられていた。
「いつの間に、甘いものではなくて……量子アリスが出てくるようになったのかしら?」
「あのね……クリプトの塔はわたしのものよ。勝手に改造しないでくれる?」
「うんうん、そうね。」
「もう……そんなわけないじゃない。」
冗談のやり取りの最中でも、量子アリスは表情ひとつ変えず、言いたげに唇を開いた。
「女神コンジュゲート様にどうお詫びしたら……。お出迎えもせず眠っていただなんて。夢の中に女神コンジュゲート様が現れて、わたし……もう……。」
「コンジュ姉が突然、この塔に現れたんだから、それが悪いのよ。気にしないで。」
「そ、それでも……そんな時間に寝ていたなんて。わたし、もう……。」
「コンジュ姉、どうするの? もう。」
「……私が悪かったわね。それなら一緒に……、甘いものにしましょう。間もなく出てくるのでしょう?」
その一言に、量子アリスは嬉しそうに駆け寄ったわ。間を置かずに、甘いものが運ばれてきて……。
……本当は、こんなことをしている場合じゃない。そんなのは、わかっているの。この状況を切り抜けるには、大精霊を集結させ、あのディールなSegWitを制さなければならない。そんな声さえ上がっているわ。でも……、間もなく現れる二人目の証人。それがAggWitよ。これは、避けられない、映し出される現実よ。ここまで刻まれてしまえば、因果律の深淵にまで深く染み込んでいるわ。
それならやはり、あり得ない事象を引き起こすしかないのかしら? つまり、本当にここで、わたしが先頭に立って大精霊を集結させ、因果をねじ曲げ、別の虚ろな時間……大過去へと接続し、そこから再度、現実を映し出すような荒業を実行に移す。ええ、それすら……あの刻印は事前に「祈りの力……採掘」と結びつけることで封じてきたのよ。
そのため、AggWitが現れることを前提に最善を尽くすしかないわ。それでも……それがわかっただけでも良かったわ。そうでなければ、今ごろわたしは……。