504, 塔の表面を飾っていた無数の「HODL」の文字が……いつの間にか「Web3?」に変わっていたとのことです。
あれから、この高い塔の中で生活しています。クリプトの塔……だったかな。
苦手だった高い所も、数日もすれば慣れる……それは本当でした。慣れてしまえば何とも思わなくなる。不思議なものです。
ところで、フィーさんは下界……ではなく、地上へ戻り、ここに残ったのは俺と量子アリス。ただ、一つだけ変わったことがあります。何気なくマッピングの情報網に触れていたら……塔の表面を飾っていた無数の「HODL」の文字が……いつの間にか「Web3?」に変わっていたとのことです。
また聞きなれない単語。でも、少なくともHODLはやめたようですね。
「HODL、やめたんだ? 噂が流れていたぞ。」
「……。こんなのばかりで、もう……。」
「それで、その聞きなれない単語……。そっちに切り替えたの?」
「うん、そうよ。ただし積極的な採用ではなく、それしかないという消極的な採用……。でも、このままではいけないわ。」
「気持ちの切り替えは早いな。相変わらず。」
「えっ? ……わたしを責めないの? もう正直、その甘いボタンを押す気力すら……。」
「責めるって、何をさ? 俺なんて、ただ存在しているだけだぞ。」
「そ、そんなことはないわ。……。」
「その様子……なるほど。これから苦手な存在がここを訪れるんだな?」
「なによ、それ……。」
「おまえはすぐ顔に出る。わかるんだ。」
「……うん。」
「HODLからWeb3? 変わったばかりだ。まずその反応はあるだろうな。それで様子を見ながら、かわす理由を考えている……そうだろ?」
「……それも顔に書いてあるっていうの?」
「そういうことにしておこう。」
「もう……。」
「なら、俺も同席する。一応、俺の方がその客より上のはずだ。」
「えっ……。そうね、一応ではなく間違いなく、あんたの方が上よ。でも……。」
「でも、なんだ? そうそう、例の出金不能の件は穏便に済ませて、うまく待ってもらっているだろ? まったく、そんな件までおまえに投げてくるなんてな。」
「そ、そうね。わたし……あんたに、その件を投げていたのよね……。」
「そうそう。これってさ、仮想通貨を買うけど絶対に売らないHODLのおかげで市場が回っていたとかでは……? そんな気もしてきたぞ。でも、それだと絶対に、近いうちに『破綻』するからな。怪しげな配当で破綻したケースなんて、別に仮想通貨に限らず、腐るほどあるし。そこは、いいよな? それだけは、絶対に譲らないからな?」
「もちろん、そこは理解しているわ。」
……そう話しているうちに。どうやら……、そのお客様が到着したようです。