501, HODLからガチホに切り替えないと、このままでは……。見えないポジションに操られる「傀儡相場」ですね。
まあ……なんだろうな。俺だって信用全力は何度もやったけどさ……もちろん短期だ。短期限定。その状態でずっと、何も考えずに持ち続けるなんて……投資でも投機でもないだろう。その点を、量子アリスに伝えてみた。
「ああ、それ……。」
「なんだよ?」
「まあ、似たようなものですね。」
「……そうくるか。」
「でも、リスクは理解してますよね? そこはやっぱり違います。」
「……。」
そうか……そういう話か。
「HODLから吸い上げれば、事実上……贖宥状を売ったのと同じ状況になりますね。」
「でもさ……。」
「はい、なんでしょう?」
「たしか、仮想通貨って全取引が公開されてるって、フィーさんから聞いたことがあるぞ。売ろうとすれば簡単にばれるんじゃないのか? それなら、常に監視してる奴もいるだろうし。」
「大精霊フィー様……ですか。でも、それは違います。」
「えっ? 違うのか?」
「はい。確かにHODLは『全取引が公開されているから安心』と言い続けています。でも、もうそれ自体がHODLなんです。だって仮想通貨には……すでにデリバティブ、そう、先物があります。先物のポジションなんて公開取引情報とは無関係。外からは見えないんですよ。たっぷり現物を持っている者ですら、裏で巨大なショートポジションを抱えていたとしても、外部からは確認できないのです。」
……。
「意味ないじゃん。」
「はい、その通りです。すでにそのあたりは本当に難しくなっているのです。つまり、表では『透明』を装っていても、実際は刈ろうと思えばいつでもHODLから一気に刈り取れる仕組みなんです。」
「……。」
俺は言葉を失った。公開取引情報で見える安心感なんて、もうとっくに消えていたなんて。見えないポジションに操られる……それが今のHODLの実態だった。
「つまり……HODLではなくて……。」
「はい。HODLからガチホに切り替えないと、このままでは……。見えないポジションに操られる『傀儡相場』ですね。」
傀儡相場……そういうことか。
「相場で、タダでマネーをくれてやる奴なんていない。そういうことだな。」
「はい。必ず『目的』があります。表でも……裏でも。そして……仮想通貨の場合は、贖宥状が絡んだ『傀儡相場』というわけです。」
「ああ、納得だ。ただ……仮想通貨の場合、そのHODLの仕掛けは、あまりにも大きすぎるということだね。」
「はい。そこが最大の違いです。」
量子アリスは迷いなく答えた。
「それで、傀儡としての価値もまた、最大に抽出されてしまいます。」
えっ……? ああ、そうか。やっぱり、そういうことか。