500, あーあ。これが噂の、ちょっとあれな、かわいらしい映像か。……まあ、鑑賞はこれで最後にしておこう。
さて。ネゲートね……どうせまた小難しい話だろうな。だってさ、十賢者なんて呼ばれる連中まで同席してるみたいだから。
まったく……あいつも、たまには息抜きでもしないとな。そろそろ俺がどこかに連れ出してやるか? いや、でもな……女神の立場じゃ難しいんだ。目立つから、どうしたって。そんな話を……そう、量子アリスに持ちかけたら、案の定、とんでもない答えが返ってきた。
「女神ネゲート様は、案外、息抜きも上手なんですよ。」
「そうなのか?」
「だって、この映像を見てくださいよ。すごく楽しそうですよ。HODL、HODLって!」
「……そ、それは……。」
あーあ。これが噂の、ちょっとあれな、かわいらしい映像か。……まあ、鑑賞はこれで最後にしておこう。そう……もう広まってるんだよな、これ。消せやしない。そう、あのHODL映像だ。
「こういうのは前向きに捉えるべきです。実際、この瞬間は楽しかったはずですし。」
「あいつ……歌って踊れる何かでも目指してんのか……?」
「それ、あるかもですよ? いきなりやれって言われて、できるもんじゃないですし。」
「……。」
言われてみりゃ……この映像……。別の意味でプロの仕事だよな……そう感じる。
「でも、HODLなんだよな……。別の言葉ならともかくさ。」
「そこなんです。もしこれが『ガチホ、ガチホ』だったら、全然問題なかったんですよ! むしろ楽しいのに。」
「えっ?」
HODLって……ガチホって意味じゃなかったのか?
「はい?」
「え、えっと……HODLとガチホって同じじゃないのか?」
「違いますよ! HODLには『崇拝』の意味があるんです。だからダメなんです。それに対してガチホは……成熟するまで、自分が持てる分だけをホールドする。つまりただの長期投資です。」
なるほど……違うのか。
「HODLは……、古代の『贖宥状……免罪符』と同じ仕組みです。贖宥状を買えば天国に行ける、そう信じて全資産を差し出した。教団は潤いました、けど……天国なんてね? もう……そんな場所は、時間の概念すらない『大過去』の広がりでしかないのに。でも今は『免罪符より数学的な結果を信じる』方が、圧倒的に多いはず。だからHODLは……その流れを引き継いだものなんです。」
……。つまり、古代も今も、中身は違えど、構造は同じ。HODLみたいなもんは、昔からあったってわけか。あちゃ……だな。
というか……全資産って?
「おいおい……その免罪符とやらに全資産を差し出す? もしそれが、今のHODLだっていうなら……まさか……。」
「はい。そのまさかです。市場はもう壊れる。銘柄なんて論外。あらゆる大精霊の通貨も粉砕され、生活が壊れる。残るのは……そう、仮想通貨だけ。それで、全資産を仮想通貨に投げ込む。それがHODLの実態ですよ。」
「……まじなのか。」
その瞬間、俺はようやく理解した。HODLの問題点を……それでは間違いなく、ガチホなんかではない。崇拝……だったのか。