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495, どんな手段を用いても、聖地を奪還するとしか解釈できないのです。その始まりの月が、今年の十月。そして、ブルーステートが完全に崩壊する……そう読めてしまうのです。

 甘いものに満足したはずよね、フィー? さあ、今度は何が出てくるのかしら?


「わたしたちは、あれから他の刻印パターンも徹底的に調べました。もちろん、量子アリスもそこにいます。」

「わたし、たち? ……ああ、あのメンバーたちね。そこに量子アリスまで加わったなら、そうなるわね。」

「はい。そしてやはり、あの刻印のような綺麗な形は、他には見つからなかったのです。もちろん、この調査で『ない』と言い切ることはできません。ただ……あれほどの刻印が偶然に出るはずがない。その点をさらに裏付けられたのです。」

「当然よ。あのSHA-256刻印は、まるで壁画のように芸術的だったわ……。いえ、暗号論的ハッシュ関数なのだから、そんなものが出てはいけないのよ。」

「はい、そこが恐ろしいところなのです。壁画のような美しさ、ずっと眺めていたくなるあの造形が……SHA-256から出てしまった。それは、ネゲートが考えていた内容と一致しているのですよ。SegWit、AggWit……。まさにそう解釈せざるを得ないのです。もともと壁画には預言や神託のニュアンスがあり、それを読み解くことで、当時、聖書を読むことができない……識字率が低かった層への支配的構造が生まれました。それを……、暗号論的ハッシュ関数SHA-256が、刻印で、やってしまったのです。」


 ……。さすがはフィーだったわ。さらに念入りに調べ上げていたのね。フィーの「頼れる精霊」のメンバーといえば……。ええ、数学専門の集まりよ。彼らの徹底調査の結論なら、この刻印が目立ちすぎていたことは、もう確実よ。


「……。わたしまで利用されてしまったようね。特に、わたしの神託も……。」

「あの刻印は、強力すぎたのです。それだけ糸が見えてしまっているのですよ。ネゲートは悪気があって託したわけではないのです。だから、気に病む必要はないのですよ。」

「……そう言ってもらえると、救われるわ。ふふ……なんか変ね。わたしが“救われる”だなんて。」


 フィーだって、もとは女神よ。その言葉には重みがある。そう、一筋縄ではいかない……今回、それを思い知ったわ。


「そしてさらに……調査の過程で、もうひとつのことが分かったのです。それが……『今年の秋から来年の秋』という期間に対して、“8”という数字が強く相関しているのです。しかもそれは、『前』に置かれているのです。」

「8? それが前にあって、強い相関って……。」

「はい。『8 は octo』。そこから期間のニュアンスに結びつけると、残るのはひとつ…… October。すなわち十月なのです。そして、それがわざわざ『前』にあるということは……。」

「前……つまり、今年の十月に何か大きな出来事がある、ということね?」

「はい……。そうとしか読めないのです。」


 わざわざ期間を指定し、さらに「8 は 十月」まで念入りに刻み込む? それを「前」に置くなんて……頭がおかしいわ。つまり、今年の十月に、確実に起こる……。……そう。そう言い切るために、刻まれていたのね。


 いったい、なんなのよ……この預言。このSHA-256刻印は……。わかってはいたけど……それでも、叫びたくなるのよ。


「もうこれは……。」

「はい、これでは……どんな手段を用いても、聖地を奪還するとしか解釈できないのです。その始まりの月が、今年の十月。その期間内に成功を収め、その瞬間に……例えば、あの『AggWit』が姿を現す。そうなれば、預言は完成し、成就する。そして来年の秋……再び、あの場所で『中間的な民の審判』があることを忘れてはならないのです。AggWitの勢いに任せて福音の票をすべて囲い込み、その驚異的な投票率によって、ブルーステートは崩壊するのでしょう。今まではブルーで確実だった地域すら、レッドに染まる。政の基盤そのものが瓦解してしまう。そういう筋書きで……間違いないのです。」


 ……フィーがそう言うのなら、わたしの解読も正しかったのね。完全に一致するわ。


「そして、ブルーステートが完全に崩壊する……そう読めてしまうのです。たしかにやり過ぎた面はありました。だからといって『完全に崩壊』なんて、とんでもないのです。それは確実に、あらゆる秩序そのものを壊すことになるのです。まさか、そんなところにまで……『SHA-256刻印』の根が張っていたなんて。もはや……『傀儡』の概念すら生ぬるい。驚きのあまり、わたしは、その場で動けなくなるくらいの衝撃を受けたのです。」


 それは……、わたしも同感よ。間違いなく、これは……まずいことになったわ。

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