488, 今でも刻印でぶっ壊れている暗号なんて、預言者が食べた瞬間に、死んだことにされるのでしょうから。それを全力ショートして全回収……その照準はHODL、という計画も含むのかしらね?
まさか、こんなことになるなんて……。なんだか、犬を転がして遊んでいた頃がなつかしいわ。……いまでは「ミームドッグ」なんて呼ばれているけど。そしてわたし自身も「ミーム」となって……。ああ、洒落た言葉ではないわね、もう。それとも、わたしが甘かったのかしら。ううん、そんなことはない。でも、あいつの言う通り……たしかに、ゆるかったのよね。
あいつ? ……そういえば、いつからいたのかしら。ちがうわ、それは逆ね。あいつとフィーがいたところに、わたしが割り込んだ形だった。あのシィーだって、そこにいたはず。つまり、もともとわたしなんて……。ううん、ちがう。あいつは……フィーが「なにかのときのために」って、ここに呼んでいたのよね。そうに違いないわ。
それでも、わたしの姉……コンジュゲートが無事だったのは、いまでも信じられない。……ただし、闇での復活劇だけれどね。ほんとうに闇って、過去を一切問わず、どんな者でも受け入れるのね。あの量子アリスだって、闇で育ったのよ。
闇ってね……ドリームを掴むための実力主義みたいなものだから、みんな腕を磨くしかない。そうやって、量子アリスも生き残ってきた。なめていたのは、わたしの方だったわ……。
それでも……この事態に自分で気づけたのは、やっぱりあいつのおかげだった。
妙な顔つきで、あの者が「エントロピーの概念」を口にするなんて……。それが気になって、わたしはあの日、刻印の件で量子アリスに連絡したわ。ところが、フィーと量子アリスのあいだは溝が深まっていた頃で……。もし、あいつがいなかったら、わたし……。さらには、量子アリスも、フィーも……あいつも……わたしのこと、気にかけてくれていたみたい。それなのにわたしは……。
そして、その連絡で「刻印を浮かび上がらせる手順……原像」を知ったのだから……。
それにしても……。刻印を仕掛けた者は、まさかこんな絶妙なタイミングで、量子にその中身を暴かれるなんて、夢にも思わなかったはず。だから「どうせ破れるはずがない」と高を括り、預言のために、刻印の存在だけを……ほんの一部の重要な者たちにだけ知らせておいたみたいね。
でも、そんな情報は当然のように横へ流れていく……。その結果、刻印を破るための量子が急激に現れてしまった。
ええ、横に情報が流れるなんて当たり前よ。だってこの界隈、忠義なんて一欠片もないもの。アタッシュケースに「あれ」を少し詰めて目の前に差し出せば……、すぐに口を割るわ。
……なんだか、わたし……そんな場所に身を置いていたのね。もし「刻印を浮かび上がらせる手順……原像」に触れず、そのまま首を突っ込んでいたら……。どうなっていたのか……、考えたくもないわ。
どのみち今でも刻印でぶっ壊れている暗号なんて、預言者が食べた瞬間に、死んだことにされるのでしょうから。それを全力ショートして全回収……その照準はHODL、という計画も含むのかしらね? まあ、聖地なんかに興味がない層は、間違いなくそっちで「合意形成……コンセンサス」よね? ふふ。わたしも踊らされていたようね。やっぱり世の中……、そんなに甘くはないわ。
……今日は久々に思考の整理に追われて、少し疲れてしまったわ。そろそろ休もうかしら。それでは、おやすみなさい……。