479, こんなボタンで終末なんて、冗談じゃないわよ。それよりも、量子アリス。あんたの量子演算の方が、下手したら終末でしょ? ちゃんと管理しなさいよ?
それからわたしは……クリプトの塔に帰還したわ。ただし、前とは少し違うのよ。実は……。
「うわ……高い。これこそが……女神の力ですね。」
「俺さ……高いところ、苦手なんだよ。」
そう、あいつと量子アリスを同伴させたの。……わかってるわ、あいつは問題ない。もともと、わたしの担い手だし。問題なのは……そう、量子アリスよ。それなりの抵抗は覚悟しているのよ。でも……こうなってしまった以上、量子を排除なんて、わたし、どうかしていたわ。そんなこと、できるわけないじゃない。
「この部屋なら窓はないわ。これでいいかしら?」
「ああ、助かる。この高さで窓なんてあったら、吸い込まれそうだ。」
「なによ? 空を飛ぶ乗り物だって、似たようなものでしょう?」
「おいおい、それとは大違いだ。あれはそこに住むわけじゃない。住むとなったら……話は別だ。」
そして……もう、なのね。好奇心旺盛な、この量子アリス……いきなり、例のボタンを押したのよ!!
「これが噂の……甘い甘いボタン、ですか。終末じゃなくて安心です。」
「なによ……こんなボタンで終末なんて、冗談じゃないわよ。それよりも、量子アリス。あんたの量子演算の方が、下手したら終末でしょ? ちゃんと管理しなさいよ?」
「もう……わかってますとも、はーい。」
それで何食わぬ顔で、出てきた甘いものを堪能する量子アリス。もう……変な暴れ方をして、変な目立ち方はしないように、しっかりと言っておくわ。
それから……十賢者よ。この塔に現れた量子アリスを見て、さすがに驚いていたわ。ただ……量子アリスはわたしの味方。それを聞いて、ほっとしていた様子ね。でも……そこは、やっぱり量子アリスだった。
「これはこれは……量子アリス様。」
「あなたのチェーンのPQCは、どれかしら?」
「そ、それは……!?」
「まずは、ちゃんとPQCを導入することね。もしテスト程度で“PQC、PQC”と連呼しているだけなら……わたしの量子演算の出番よ? そこ、わかっているかしら?」
「量子アリス様……そ、それは……はい、わ、わかっておりますとも。」
「ショアとグローバー。どちらがお好みかしら?」
「あ、あの、それは……。」
その量子アリスの瞳は、冗談めかしているのに、まったく笑ってはいなかったわ。……。
ちなみに現時点では、十賢者と量子アリスは同じ精霊同士なのよ。ところが、量子アリスは近いうち……その上位である大精霊になる素質が十分に備わっているの。結局、それだけ量子が躍進しているということね。そして、その空気をすばやく読んだ十賢者。なんというか……うまくやっていたわ。ふう……衝突もなく、杞憂に終わりそうで何よりだわ。
それでも……、難所はあったわ。そう……「時代を創る大精霊」よ。やっぱり、「聖地の奪還」が最優先ってことよ。