478, なぜ戦争という概念を、わざわざSHA-256に刻んだのか。仮想通貨との相関を追い、その監査の履歴を辿れば……これが偶然ではなかったことが、否応なく浮かび上がってくるのです。
戦争って……。フィーさんからの衝撃的な発言に、俺以上に戸惑いを隠し切れないのが……そう、ネゲートだった。
「……あの刻印では、やはり、この解釈となるのです。その内容は、軽々しくと実行できるものではありません。それゆえに、このような形を選んだ。そう考えるのです。」
「そうなるのね。たしかに、具体的よね……。」
「はい、そうなるのです。そして、その刻印に、そんな具体的なスケジュールまで細かく刻まれているとなると……それは、このSHA-256と呼ばれる暗号論的ハッシュ関数が誕生した瞬間から、すでに決まっていたのでしょう。」
「それって……。」
「はい、こうなってくると、全容が少しずつ見えてくるのです。まず、破られたあのハッシュ関数です。もし、そこにバイアスが見つかっていないのなら古典演算で破るのは厳しいため、今でも『暗号論的ハッシュ関数』として使われているはずなのです。そしてもし、その設計者が初めからバイアスを仕込んでいたとしたら……つまり、その設計者と、その周辺の事情を知る者だけが、そのハッシュ暗号を破れるという、暗号論的にはあってはならない事態に発展していたのですよ。」
「それって、たった一つでも不審な点が見つかったら、設計者が他にもバイアスを仕込んでいるんじゃないかって疑われて……暗号論的とは呼べなくなるってことよね。」
「はい。そしてSHA-256は、刻印を選びました。正直……暗号論的ハッシュ関数としてのSHA-256に、そのような刻印を美しく刻み付けるなんて……想像すら追いつかないほど難しい作業だったはずなのです。もちろん、暗号論的には、絶対にやってはならない『死』なのですが……。」
「うん……そんな刻印、たった一つの疑いを遥かに超えたものよ。もうSHA-256は、暗号論的どころか、もはや暗号ですらないわ……。」
えっ……。このフィーさんに、ここまで「難しい作業」と言わせるとは。このSHA-256、別の意味で……ああ。
「たしかに……仮想通貨って、なぜかSHA-256への執着が異様に強いわ。それは前から気になっていたの。少しは分散した方が……と思っても、結局はSHA-256で、さらには……SHA-256同士を重ねたSHA-256Dまで使って、とにかくSHA-256にこだわるのよ。」
「はい、それもあるのです。そしてそこに、なぜ戦争という概念を、わざわざSHA-256に刻んだのか。仮想通貨との相関を追い、その監査の履歴を辿れば……これが偶然ではなかったことが、否応なく浮かび上がってくるのです。」
つまり……仮想通貨には、SHA-256への異様な執着がある。それだけは、どうしても外せない「何か」がある……そんな気がするな。それと……その刻印に関係があるってことだよな。流れ的に見ても、それが「絶対に外せない理由」ってやつだ。




