477, つまり、仮想通貨は……ずっと、SHA-256に刻まれた“刻印の鎖”で戦争に繋がれているのです。
「おーい、久しぶりじゃないか、女神ネゲート様。ところで、下界の空気はどうだい?」
「な、なによ……。」
ほんと、一時期はどうなることかと心配したんだぞ。あんな塔……冗談でもやめてくれ、って思ってたよ。でも……やっとフィーさんや量子アリスとのわだかまりも解けて……よかった。
そして、最もネゲートを心配していたのは……。
「ネゲート。やっぱり、あなたは私の妹ね。こうなると思っていたわ。」
「……、コンジュ姉……わたし……。」
「ううん、気にしないで。私だってあなたに偉そうなことを言える立場じゃない。私も……無尽蔵なエネルギーで暴走して……似たような展開だったからね。」
そう話しながら、コンジュゲートさんは、少し懐かしむように微笑んだ。
「あら……覚えてる? それでいよいよ、どうにもならなくなって……消滅直前となったとき、邪神イオタ様に拾っていただいたのよ。そんな邪神イオタ様は、そんな私の過去など一切気にせず、『闇では全く問題ない』と、深く落ち込んでいた私を励ましてくれたりもしたわ。」
「……そ、それは……。」
「うん、やっぱり新しい概念や構造を導入するのは難しいわね。今回の件を見て、改めてそう感じたわ。」
「……。」
そこに、真剣な表情を浮かべた……フィーさんと量子アリスが現れた。それを確認したネゲートは、すぐさま彼女たちのもとへ駆け寄った。
「……。さて……本題ね。そうよ。確認したわ、あの刻印……。」
ネゲートはそう切り出し、刻印と予言にまつわる詳細な話をし始めた。……なんか、協力してくれと頼まれた? なんだろうね、それは。
「やっぱり、そうなのですか。嫌な予感はしていましたが……完全にそれは、糸まで見える状態というか……。」
「糸? まあ……そうなるわ。あらかじめ用意されたステージで……そういうことよね?」
「ステージ? ああ、あれは凄かった。HODL! だったな。」
「えっ……、ちょっと!? なんで、あんたがそれを……。」
「おいおい、おまえさ……女神なんだよ? すでにその映像、出回ってるぞ。そりゃあ、そうなるさ。ははは。」
「……。」
おやおや。頬を赤く染めるくらいなら、あんなことするなっての!
「あ、あの……。まあ、あれはあれで……。」
「そうですよね。わたしも、あんな女神ネゲート様、ちょっと不思議に思いました。」
「ちょっと……観たの? ……。」
そりゃあ、出回ってるんだから。どうせ消したって、別の誰かが面白がってまた上げる。つまり……もう、消せない。
まあ、こんなふうに和やかな空気になったところで……どうせ重い話に戻るんだろう。俺だって、その刻印には、どうしても不気味さを感じてしまう。何かを暗示するための道具……例えば神の啓示とか、そういうやつ。もしかして、それに使うために……なんて、変なことまで考えてしまう。
「それで……そう。すでに、わたしも含めて、ここまで、すべて台本通りってことよね……?」
「はい。そうなるのです。特に、あのような決定論的な構造に刻まれた刻印は、より深刻にとらえる必要があります。なぜなら、決定論ゆえに、それをずっと同じ構造で使い続けることになるからです。そして、それを目的としているなら、なおさら深刻なのですよ。なんといっても……あれは『暗号論的』を名乗っているのですから……。」
「そうよね。これでは常に、仕掛けた者の意図通りに引き寄せられていた可能性だって、否定できないわ。」
「はい、それなのです。そして、それは特に、今回は深刻と言うべきか……それとも、それこそが本当の目的だったのか……。そうです、聖地に関わる刻印なのですから。」
「……そうよね、やっぱり……深刻よね。それなのに、わたしったら……よく考えずに……。」
「それで、なのです。つまり、仮想通貨は……ずっと、SHA-256に刻まれた“刻印の鎖”で戦争に繋がれているのです。」
「……っ……、えっ?」
……、SHA-256って? それに戦争って……。その唐突すぎる言葉に、俺すら……思わず、息を呑んだ。