475, わたしは、仮想通貨を本気で調べた。そして……、その奥に隠された秘密に、踏み込む覚悟を決めたの。ええ、徹底的に調べたの。そのステージの終幕が……まさか、「聖地の奪還」だと言いたいのかしら?
ここは、クリプトの塔。そして、この部屋の存在を知るのは、この地で、わたしだけ。
それからわたしは、仮想通貨を本気で調べた。そして……、その奥に隠された秘密に、踏み込む覚悟を決めたの。ええ、徹底的に調べたの。順番が違うって? そうかもしれない。けれど、この流れになってしまった以上、もう避けられないのよ。
すると……気になるキーワードの断片が、ふっと浮かび上がったの。それは謎めいていて、どこか惹きつけられる。柔らかな霧のような概念に包まれ、決して簡単にはその中を覗かせない。
とても古いもの……けれど、それが何なのかまでは、どうしても辿り着けない。そもそも仮想通貨だって、これを詳細に説明できる者など、まずいないはずよ。ただ、そこに「ある」だけ。そして、曖昧なまま飲み込まれていった……。
きっと、そのあやふやな概念の境界から外へは、一歩も出られていないはず……。だって、その最初の「それ」自体が、わからないのだから。そうでしょう?
そして、その最初の概念を、わたしは「S」と名付けた。理由は……ないわ。ただ、そうせずにはいられなかったのよ。
そのSが、わたしに語りかけてきた。……それは、先日から気になっていた「刻印」についてよ。
その刻印はどこに? そう……このチェーンの仕組み自体が数の塊で動作しているのだから、その構造のどこかにあるはず。そして、気がつけば……この流れで「ハッシュ関数」が顔を出していた。こんなところに、いったい何を、どうやって……?
もしそれが事実なら……捨てられたハッシュ関数ではなく、今もなお使われているどこかのハッシュ関数に、ひっそりと、そして決定論的に、Sの刻印が刻まれているということになる。……正直、信じられない。
でも……ここで思い出してしまった。「量子艦アリス」の、あの話を。あれは作り話……ひどい内容だった。でも、あれから落ち着いてきて、量子アリスの立場が理解できるようになったわ。だって、量子だもの。ずっと、わたしを狙ってきた存在よ。そんな環境下に長く置かれれば、ああなるのも当然よ。
でも、もし……あれが単なる作り話ではなく、どこかで聞かされた断片を無意識に組み立てていたのだとしたら……。あの物語に出てきた「暗号論的ハッシュ関数」、その中に、このSの秘密へとつながる刻印が潜んでいることになる。
……いや、まだ信じてはいない。けれど、本当にそんな刻印が、今も使われているハッシュ関数に埋め込まれているのだとしたら、その意味は……。
そう……問題は、その刻印から生じた「予言」なのよ。あの不可解な「期間指定」。今年の秋から、来年の秋まで……ってなに? そして、恐怖すら覚える「奪還」という言葉の響き。……さすがに、女神であるわたしですら、背筋が凍ってきたわよ。
もしこのSが、仮想通貨と深く結びついているのだとしたら……当然、その予言に沿い、その目的と連動して動いている可能性があるわ。その場合……もう、仮想通貨が生まれるよりもはるか昔から、すべては台本通りだったことになる。そうでしょう?
その刻印が示す予言通りにすべてを進めるためには、仮想通貨の起源から、それから起こる出来事の一つひとつまで、すべてを「一本の鎖……台本」でつなぐということ。つまり、わたしも……そして、他のみんなも……。あらかじめ用意されたステージの上で、知らず知らずのうちに踊らされていたってことね。
そして、そのステージの終幕が……まさか、「聖地の奪還」だと言いたいのかしら?




