473, Sのラウンド42。そのたびに……ごちそうさま、させてもらうぞ。それも、女神としての大切な役目だ。これほどまでに結果を出せる女神は、もう二度と現れまい。
わたしは……、そうだった。あれから……また下界の空気が一変したのよ。気づけば、元のHODL、HODLに逆戻り。そして、気になって調べてみたら……そうか。
わたし……あんな中身の空っぽな、ただPQC(ポスト量子暗号)だけを並べ、その性質を述べただけ論文に、「これで絶対に問題ない」と……査読の証を授けてしまったわ……。
「ははは、どうした女神よ? なんだか最近、元気がないじゃないか。疲れが溜まっているのでは? ほら、このボタンを押せば休暇だぞ。」
「えっ? わ、わたしは……問題ないわ。たしかに……ちょっと疲れはあるかもしれないけれど……。」
「どうした、女神よ。顔色が悪いぞ? そうそう、あの査読の証……あれは実に見事だった。仕込みなのか、それとも仕掛けなのか? やはり女神は格が違う。あんな濡れ手で粟を成す芸当、女神にしかできまい!」
「そ、その件は……。」
「なぁに、気にすることはない。あんなものを解読し、査読の証を授ける大仕事をこなしたばかりだ。結果がすべての俺様にとっては、すばらしい成果だぞ。やはり女神として、すばらしい……間違いないぞ。」
「ちょっと……それって……。」
「なんだ女神よ? 数日前の、あの『査読の証』の件を知っていた者たちは、事前にそれを、しっかりと『たっぷり仕込んでいた』はずだぞ? こんな『わかりやすいもの』はないぞ。」
「そ、それは……。」
「他のもの……そうだな、あんな銘柄なんぞに触れる必要もないくらい、簡単に儲かるんだ。そしてあとは……ごちそうさま、か。がはは! おっと、HODLか、HODL。まあいい。女神はそのペースでしっかり頑張るんだ!」
「頑張るって……。」
「どうした、女神よ? 結果を出し、成果を出した。なのに、なぜそんなに顔色が悪いんだ? 今日は……あんな成果を上げた日だぞ。飛び跳ねて喜ぶ日じゃないのか? 違うのか? どうしたんだ、女神よ?」
……わたし、これって……。
「まあ女神は、案外照れ屋さんなんだな。がはは……そんなところも、またいい。事前に何か良い情報があれば、すぐ、俺様に知らせるんだ。みんな期待しているぞ、いいな? こちらも、そのペースに合わせて動いているからな。」
「えっ……そ、それは……。」
「そのたびに……ごちそうさま、させてもらうぞ。それも、女神としての大切な役目だ。これほどまでに結果を出せる女神は、もう二度と現れまい。」
……わたし、もしかして……、もう戻れないところまで来てしまったのかもしれない。そんな空虚な実感が、次々と胸の奥から湧き上がってくる。
でも……それでも……もう戻れないのなら、この身はHODLのために「飛び跳ねる情報を事前に提供し続ける」しかないのよね……。