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468, Sのラウンド39。その『甘いボタン』の良さがわかるとは、それでこそ女神だ。まったく、あんな量子などに食らいつく連中には、この幸せは一生わからんだろうな。本当に哀れな奴らだ。

 さーて、気持ちを切り替えていきましょう。今日もまた、大切な一日。PQC(ポスト量子暗号)の論文に、女神の査読の証を刻む……これで確実になるわ。


 ほんと、あれを考え出すと、堂々巡りになるだけ……そう、ハッシュ関数の刻印の件よ。やっぱり何事も、すんなりとはいかないわね。でも、それならわたしらしく振る舞うだけ。すぐに気持ちを切り替えて、次へ向かうの。


 どうやら、あの量子がまた騒いでいるらしいわ。ほんと、毎月毎月、騒げばいいってものじゃないのよ! でも……さすがに無視はできない。だからこそ、PQCだけはブロックチェーンの基盤に組み込んで、あの量子を牽制するの。PQCならショア対応だし、女神としても受け入れられるわ。


 それで、そのPQC論文に「女神の一推し」が欲しい、ときたの。わかったわ……わたしの査読の証を授けましょう。これで問題ないはず。いかがかしら?


 さて。今、わたしはその論文を読み終えて、一息ついたところよ。どこかの皮肉好きな精霊が書いた「異端な論文」とは違って、実に気持ちのいい内容だったわ。それにね、このクリプトの塔に新しく「変わったボタン」が付けられたのよ。押すと……なんと「終末モード」へ。それで……試しに押してみたわ。ポチっとね。


 ……、……、……。驚いた? ふふ、違うのよ。実はこれ、押すとすぐに「甘いもの」が出てくるボタンなの! 最初は本気で「終末スイッチ」だと思われてしまい、十賢者まで心配してきたけれど……。もう、こんなにも簡単に、この地が終わってたまるものですか。


「女神ネゲート様。お持ちいたしました。」

「うん、そこに置いておいて!」


 ボタン一つで「甘いもの」が現れる……これがわたしの小さな幸せ。もちろん、みんなの幸せも全力で護るわ。あんな量子なんかに、絶対に好きにさせない。それだけは誓うわ。……誓うって、誰に? そうだった、わたしは女神様よね。ふふ。


「おや、女神よ。休憩か?」

「ええ、そうよ。ほら、このボタン……便利だわ。こんな素敵なボタン、わたしでも考え付かないわ。ふふ。」


 このボタンは……こうしてこの塔に持ち込まれたの。そう……、彼のアイデアだったのよ。


「そうかそうか。その『甘いボタン』の良さがわかるとは、それでこそ女神だ。まったく、あんな量子などに食らいつく連中には、この幸せは一生わからんだろうな。本当に哀れな奴らだ。」

「そうよね!」

「おお、急に声が明るくなったな。さすがだな。」


 そんな他愛ない話をしながら、甘いものをゆっくりいただく幸せ……これが、クリプトの塔で交わされる、この地で頂点を託された「時代を任された女神」と、この地でファーストを託された「時代を創る大精霊」の会話だなんて……ね。実に平和でしょう? そこに、血生臭い話なんて一切ない。そういう話を好むのは、どうせ量子よ。


 まったく、その量子は……今ごろ、表には絶対に出せない「量子最適化回路」でも組んで、喜んでいる頃かしら? 「大地を切り裂く大爆発」向けなんて、出せるわけないものね。いい加減に……しなさいよ?

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