463, Sのラウンド36。十賢者と、美しきブロックチェーン。これもまた、一つのヒストリーとして、光円錐に刻まれることになるわ。
いよいよ、この「クリプトの塔」が賑やかになってきたわ。「光円錐にヒストリーを刻む上位リーダーの十賢者」も、とうとうこの塔の構造に組み込まれた。そのたびに、わたしの力は増していくのよ……美しく、静かにね。
これからは「HODLこそが正義」よ。力でどうにかする時代なんて、もうやめにしましょう。みんなで、クリプトを支え合いながら幸せになるの。そんな調和された構造に、量子なんて必要ないわ。
それに対し……推論は? そうね、それは「ぎりぎり」のラインかしら。でも安心して。推論を操る大精霊シィーは、すでにわたしに服従しているもの。つまり、推論さえも、わたしの意思でどうにでもなる。そうなれば、推論は可愛いものよ。便利に使ってみましょう、ね? わたしたちの未来のために……。
それでね、これこそが「平和」よ。あ、それでね……、正直なところ……いくら「平和」なんて叫んだって、そんなもの、実現なんてしないの。そんなタグを掲げても、そこに「力」が宿ることは、絶対にないわ。
だからこそ、わたしは定義から書き換えたの。「正義」の概念を再定義し、その照準をHODLに合わせた。そうすることで、HODLとの相関から「平和」は実現される。それがわたしの意志……神託の構造。……そして、それを実現するために動いてくださったのよね。この、ディール好きな「この方」が。
そう……、ファイト、ファイト、ファイトよ。ただし、戦い方を誤ってはいけない。「HODL」で戦うの。このようにね……静かに、構造的に。これもまた「HODLは正義」の一片となるのだから。
さて。光円錐にヒストリーを刻む方々と、少しお話ししましょう。このクリプトはちょっと変わっていて、ヒストリーを刻むことでトランザクションが進んでいく仕組みが採用されているの。
すばらしいわ……。本当に、美しい構造。……それでも最初、わたしは……勘違いしていたの。あまりに精緻で完璧だったから、悪魔的な何かと見てしまった。あの頃のわたしは、本当にダメな女神でしたわ。しかもこのクリプト、あの憎き量子に対しても、最初からある程度の防衛構造が組み込まれていたなんて。無駄が一つもない。美しい……。まさに、理想なチェーンでしたわ。
「これはこれは……。女神ネゲート様。そして、時代を創る大精霊様。」
「あら……あのときは……、少し、とんでもないことをしてしまったわ。影響が最小限で済んで、本当にホッとしたの。」
「女神ネゲート様。どうかご心配なく。あの程度の停止トラブル、我らにとっては余裕でございます。」
「それなら……良かった。本当に申し訳ないことをしたわ。あのような事態は、二度と起こさないと誓うわ。」
「……女神ネゲート様。ありがたき幸せに存じます。この感謝の気持ち、ぜひともクリプトへの貢献という形で、表させていただきたく……。」
「おいおい、なんだなんだ、トラブルなんざ、致命傷以外は全部セーフだろ。それくらいの度量がなきゃ、ディールなんて張れないぜ? それで、西側の奴らは、分かってんのか? 誰のおかげで『自由』に生きてられるのか、少しは感謝してほしいもんだ。我らの民は、今も苦しんでるんだ。ディールくらい、当然だろ? ……それとも、あれか? 東側の精霊の奴隷にでもなりたいのか? 東側で『地の大精霊』に向かって『タコ』なんて言ってみろ? 冗談抜きで、その日に消されるぞ? それくらい自由がない地域だ。……わかってもらいたいもんだな。」
ああ、それ……。そうね。あの「地の大精霊」の話ね……。……。
「この『自由』こそが、ありがたき幸せでございます。」
「ええ、そうね。そしてこの『自由』が、HODLと結びつくことで……『真の平和』がもたらされるのよ。わたしは、そこに賭けることにしたの。だって、それ以外に……『平和を実現できる見通し』なんて、出せるのかしら? 絶対にないわ。そんなことに迷っているうちに、あの……終末を示す例の物騒な時計。それが『午前0時』を指すことになるでしょうね。」
「……さようでございます、女神ネゲート様。しかも、それを量子が加速させるという見通しですね?」
「そうよ。当然じゃない、あんなもの。わたしは……絶対にああいったものには屈しない。たとえ時が、終わりを指そうとも……この『チェーン構造』を信じ抜くわ。」
十賢者と、美しきブロックチェーン。これもまた、一つのヒストリーとして、光円錐に刻まれることになるわ。そう……これは、必然の事象だったのよ。