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44, 妹さんが心配です。沢山の書物に囲まれた病室で、みているだけで痛々しい点滴チューブが沢山つながれていました。

 俺は、この先……どんなに厳しくても、つらくても、しぶとく生き残ります。衝撃的なつい先日の出来事から、人生観が変わりました。


 そうです……、なぜか寝過ごして持ち越ししてしまった「あの日」の、ヤケになって外出した先での出来事ですよ。たまたま、たまたまです。俺のお隣に座られた美しき方の妹さん……。うががいました話をさっとまとめると、厄介な病による長期の入院で、すでに助かる見込みがない、でした。


 その治療には莫大な計算量を必要とするらしく、現代では解決できない、手に負えない……。


 もうこの地点でさ、俺が持ち越した分なんて、どうでもいい。これしか思い浮かびません。


 そう、もはやどうでもいい。持ち越した分はですね、思い切って月曜の前場で全枚数をぶん投げましたよ。……、相変わらずですね……俺は。もはや現状、そう簡単には値が上がる気配がない、俗にいう「マネーゲーム」は終焉したんですよね。


 おや、そのあたりは鮮明に憶えているようです。あの有名な衝撃を超えたショックの影響から、大幅な緩和により楽な相場が続いていたのですが……、また、また、また、あの本来の難しい相場に戻ったという、ただそれだけのことです。


 これが本来の相場……、どうやったらこんな所から利益が出せるんだと、毎日問いかけたくなる、あの難しい相場ですよ。買ったら下がる、買い込んだら爆下げする、売ったら上がる、空売りしたら焼かれる、あれらです。まるで、俺たちの注文を「先読み」して嫌がらせ……いや、「予知」というべきかな! 予知? 予知……か。どこかで、しつこくこの言葉に迫られた記憶が微かにあります。なぜでしょうか……?


 そうわかっていても、深く考えずに持ち越しですから。自分自身が嫌になってきます。でも、でも! いつもなら無尽蔵に湧き出てくる悲しみとか、悔しさとか、そういった負の感情をまったく感じることがなくなり、平静になることができています。そう……生きているだけで、十分と、悟ったからです。


 ところで、先日の衝撃の続きには「重大な事態」が待ち受けていました。なんと、その妹さんのお見舞に、俺がですよ……、一緒に来ていただけないかと、お願いされてしまいました。


 さすがにウェブでいつも拝見していた方とはいえ「あの日」が初対面なはずです。うん、言い切れない所が記憶喪失なのです、ごめんなさい……。


 しかし、です。なぜか絶対に行きたいという「強い意志」が、俺の心の奥底に芽生えました。つまり……、ほら、記憶がおかしいからさ、過去にこの方と……何かあったのかも? きっと、それです。でも、怖くて聞けません……。それゆえに、俺の隣に来たんだ。だって、俺の隣なんて、あり得ませんからね……。


 なお、俺の友人たちは、冷やかすことなく、その提案はおまえに向いているね、の一言でした。まあ……、そういうのは得意分野です。だって、それ位はできないとね……、俺の存在価値がないです。


 話だって、それなりには噛み合いました。例えば「計算量」です……。絶望感が漂いますよ。なぜなら、計算しきれないものが目の前にあるという「不思議」について、色々な考えを巡らせていると、最後は決まって、それらは誰が生み出したんだよ……になります。ところで実は、それらは計算してはならない「知ってはならないもの」なのかもしれませんよ。そして、すべてを知ったら「最後を迎えるための手引きをしてしまう絶対的な意志」に、絶対に、絶対に逆らえず、とまどうことなく「最後を迎えてしまう」という……? あれ……? 俺の頭からでは、絶対に考えられないような複雑な論理が出てきてしまいました。


 最近、こういうのが多いです。記憶が壊れると……頭が冴えるのかな? まったく、訳がわかりません! 俺って……、いったい誰? になります。


 でも……。この冴えた俺、悪くはないです。なぜなら、気になるからです。何をって? それは、このような問題を並べるための「知識」や「知恵」を、どこで得たのだろうか? です……。おそらく、俺の失われた記憶の欠片に有力な手掛かりがありそうですね。このように都合よく解釈し、今はそれらを有難く使わせていただきましょうか! もしかしたら、これらが役に立つかもしれません。なんてね、ははは……。俺の冴えわたる頭から、その妹さんの治療法でも見つかるのか? ははは、ありえないって。まったく俺は……、なんてアホな事を考えているんだ……。


 そんな事で考えを巡らせていたら、睡魔が襲ってきました。さあ、寝ましょう。迷うことなくベッドに潜り込みます。明日は、大切な用事があります。夜更かしはしません。そして、少しは記憶が戻ることを期待しながら、対処していきます。対処といっても今は寝るだけですが……、ああ、はい。


 こうして、夜が明け、朝になりました。


 大切な用事……例の約束の日は、今日でした。このため、本日は相場をお休みいたします。素早く俺なりに身なりを整え、持参していくべきものを考えます。やはりフルーツとか、そういうものかな? 古い考えか……。さらに少し考え、なぜか、なぜか……結局「甘いもの」に決めました。甘いもの……フルーツではありませんよ。なぜか頭に浮かんだものは「パンケーキ」だったのです。


 実は、近くの洋菓子店で、写真映えがとてもよいパンケーキをアレンジしたものが人気で、フルーツなんかよりも、きっと、喜ぶだろうと判断いたしました! 食べることができなくても、楽しんでいただけたら、俺、嬉しいですから!


 そこで投資家を名乗るなら……、思い立ったら、すぐに行動です。こんな平日に俺みたいのが洋菓子を求めて辺りをうろつくなんて、かなり気まずいのかもしれませんが、そんなのはまったく気にしていません。ショーケースの中に収められた……、小動物を象った可愛らしい「パンケーキ」を堂々と指定しました。たしかに……、これ、すごく見栄えが良いです。パンケーキって、普通は、フライパンで焼いたものにバターとハチミツをかけていただくものを想像してしまいがちですが、そんなイメージを完全に否定するほどの衝撃がありました。


 なんだろう……、このまま飾っておきたくなるほど、細部に至るまで丁寧に作り込まれていて、可愛らしい小動物を彷彿とさせるデザインでした。スマホで撮影して、自慢したくなる気持ちがわかります!


 そこで、かわいいパンケーキが収められた、これまたかわいい手提げ袋を片手に、先日の方と合流しました。目線が気になりましたが、余裕です。それから、そのパンケーキの話題になります。


「かわいいね、それ?」

「喜んでいただけると、嬉しいです。」

「……。ありがとうございます。」


 ……。少しでも気を紛らわそうと、懸命に話しかけてきているのが、すぐにわかりました。俺は、それを全力で受け止め、しっかりと支えながら……、ゆっくりと時間が流れます。


「……。結構、遠いの?」

「うん。でもね、大きな湖がある、綺麗な場所にあるの。」

「大きな湖があるのか……。」


 湖か……。列車を乗り換えるたびに、時間当たりの本数が急激に減っていきます。時刻表がスカスカになっていきます。これは……、俺が考えていた以上に遠いみたいです。


 そして、到着駅に至る最後の列車に乗り換えました。


「こんなことを聞くのは、何もわかっていないとか突っ込まれると思います。」

「……、なに?」

「この先にある病院よりも……。」


 言葉が詰まってしまいました。聞きにくいです。


「……。この先の病院は、とても信頼できる方々が揃っているのよ。」

「……。すみません。無知過ぎました。」

「ううん。それは、仕方がないわ。今のご時世、受け入れていただけるだけ、有難いから……。」

「あっ、……。すみません。」


 ……。そういや、物価の優等生だったはずの卵や、レギュラーが、あんな状態だった。すなわち、医療費だって……、でした。


 重苦しい空気の中……、目的の駅を降りて、そこからタクシーを乗り継いで、ようやく……病院に到着いたしました。


「ここが……。」

「……。うん。」


 そこから、重い足取りで、病室に向かいました。その部屋に入ると同時に目に飛び込んでくる、無機質な床と壁。その壁から、無慈悲な洗面台が飛び出ています。そして……その先には……、あれ?


 その先には……、別世界が広がっています。えっ、なにこれ? 難しそうな多くの本に囲まれています。あちゃ……、床にも沢山、積み上げてあります……。


「あ、あの……。」


 ……。その本たちの中心で……、みているだけでも痛そうなチューブが沢山つながれています。ほんと俺……、普通に生きているだけで十分だ。そう俺に……本気で感じさせる、チューブ。


「……。はじめまして。」


 本を大切に抱えながら、ゆっくりと体を起こして、小さな声で挨拶してくださいました。入院生活が長いのがすぐにわかりました……。一回り小さく、やせています。ただ、その顔立ちや雰囲気は……姉さんとそっくりです。


 そこでなぜか……、頭に強い痛みを感じました。この方……、初めてではないような気がするからです。また……「既視感」です。いよいよ、何かを思い出すのかな? そうだった。俺の記憶は、おかしいのだった。


 でも……、仮に、過去に出会っているならば「はじめまして」ではないよね? まあ……、細かい事は気にしません。


「急に、この姉さんから呼ばれてしまってね……、ははは。」

「……。嬉しいです。」

「俺なんかで?」

「はい。わたし……、もう先が長くないので……。でも心残りがあります。姉様に、自由になって欲しいのです。」


 ……。もう先は長くない……。その様子から、告知はされているのだろうか。……。俺が同じ立場なら、きっと、狂っている。この子……、すごいです。そしてさ、「バクエキ」とか「大損」とか、そんな単語で騒いでいた俺自身が情けなくなってきました。


 また、俺が呼ばれた理由も、理解しました。これは、重大ですね。そして、この俺の能力が唯一生かせるミッションではないか。頑張ります。


「俺に出来ることは、なんだい?」

「……。わたし、もともと助からない身です。……。でも、今日は体調がいいのです。神様はみているのですね……。今日だけはお願いと何度も頼んだのです……。」


 しかし、苦しそうです。すぐに、姉さんが背中をさすります。


「姉様……。わたし、嬉しいです。」

「……。」

「わたしは……、姉様はもちろん、ここのスタッフの方々に支えられています……。あの大変な時すら、助かる見込みがないわたしなど、見捨てれば良いのに……。疲れ切っているにも関わらず……、嫌な顔一つせずに、終始笑顔で元気をいただきました。」


 大変な時……。なんかあったみたいです。俺の記憶……。このときくらい、さ! それにしても、こんな子を見捨てるのかな……神様ってのは?


 姉さんの手が止まります。ここで、俺の出番ですね。


「ところで、姉さんを自由にするっていうのは、そうだね……、君の希望を叶えることだね。」

「……。わたしの、希望ですか……。わたしは、姉様や、あなたや、ここの優しい方々……『家族』に囲まれて、とても幸せです。これ以上を望んだら……、穏やかな死は迎えられないです……。」


 ……。「家族」か。なんだろう、まただよ。この言葉に、心拍数が上がります。ふう……。大きく深呼吸をして、何とか……、その場をしのぎました。


「……。いいんだよ、そこは望むんだよ。それはきっと、その姉さんも願っているよ。」

「……。」


 ゆっくりを目を閉じで、何やら考え始めました。それとも……、言いにくいのかな? フォローします。


「博学みたいだね? その本とか……?」


 そう問いかけると、ぱっと目が開きました。


「こ、これらは……、わたしのできる限りのことをしています。」

「できる限り?」

「はい……。いま、構築しているのは『時間』に関する内容です。」

「えっ……と。」


 まずいです。突っ込むべきではなかったか。時間、ですか? ……。


「他の要素と比較して……、時間だけ、特別な存在にみえます。実際に、他の要素は簡単に導けるのに、この時間だけは……計算が厄介なものが多いです。」

「そ、そうなんですか……、時間ね……。」


 こんなテーマ……。本来、俺の理解を超えているはずですが、なぜか……? 共感できました。そう……、俺は今日、冴えています。ありがたいです。大事な場面ですから、ここさえ冴えてくれるならば、寿命が縮んだって構いません!


「わたしに残された時間が残り少ないので……、これが最後になりそうです。でも……、わたしが得た『知識』から再構築されたものを……、ここに残しています。」


 そうつぶやくと……、小さなノートタイプのパソコンを枕の下から出してきました。


「……。すごいね?」

「……、いいえ、です。どのような形であれ……、こうして生かしていただいた分は、恩返しするつもりで……、さいごの瞬間まで、頑張ります。」

「俺が君と同じ立場なら、……。だめだ。想像すらできない。ごめん。」

「そ、そうですか……。でも、わたしにかかっている大きな費用を考えたら、それは……。」

「……。」


 ……、何とかならないのかね? これ……。心が痛いです。そうだ……、あれだ。


「スマホは持っているかな……?」

「はい。……あります。」


 俺は、あの「パンケーキ」を差し出します。


「どう? このパンケーキ?」

「……。すごいです。すごくかわいくて、綺麗です。そのパンケーキ……。」


 反応してくださいました! きっと、食べることは無理だと思います。でも、いい夢はみることができますよね?


「おっと。君がパソコンで残している『記録』ってさ、ブログか、何かでしょう?」

「……、はい。似たようなものなのです……。」

「そこで、最近はね、見た目がきれいでかわいいものを撮影して、上げるのが流行しているんだよ。その『パンケーキ』も、それで人気があるんだ。」

「……、そうなのですか! その……耳がかわいいです。でも……撮影は……。」

「気にしなくていいわ。あとで、私が代わりに怒られてね、それで済ませるわ。」

「……。それなら、お言葉に甘えて……なのです。」


 そっか。撮影は禁止されている場合が多いからね。でも……よかった、ナイスな姉さんです! とても喜んでおります。それから、撮影を終え、パンケーキが無事にアップされていきました。もちろん、喜びの言葉を添えて、です。


「……。嬉しいです。そして、甘いもの、ですね。食べてみたかったです……。でも……、わたしは……。」

「……。ここで、もう一つだね。」

「わたしに……、もう一つ、ですか?」

「うん。まだ満足していないよね?」

「……。」

「あと一つくらいは、わがまま、構わないよ?」

「……。そうですか。それなら……。本で山積みになっている街に、行ってみたいです……。」


 頬を赤く染めるほどの……、精一杯のわがまま、かな。ああ……、本で山積みになっている、街があったな……。たしか、それで有名な地区だ。ただ……、姉さんが、重い口を開きます。


「……。ごめんね。外出は……厳しいわね。」

「……。はい。わたしが外出なんて、『思い浮かべるだけで目的地に到達できる力』でもない限り、です……。」

「……。」


 急に現実に引き戻され、俺は思わず……天を仰ぎます。何か良い方法はないかな……?


「わたしが生まれ変わったのなら、心ゆくまで駆け巡りたいです。この巡り合わせで……。」

「……。」

「わたし……。このような方とお会いできただけでも、何かの縁を感じます……。すごい幸運に囲まれています……。」

「……。」


 まったく言葉が出ない。


「……。わたし、この日、この瞬間がすごく楽しみで、そして体調が良くて、とても嬉しいです……。こうして色々とつまらずに話すことができます。」

「やっぱり、いつもは……苦しい事とか、あるの?」

「はい……。つい先日は……、吐血を繰り返してしまい、覚悟を決めたのですが……、まだ、生きています。」

「……。ごめん。そんな事と知らずに……。」

「いいえ……。」


 吐血……。なぜか、引っ掛かる。そこで俺は、ふと感じた疑問を……うかがってみました。


「俺は……、何かの力で、ここに呼ばれたのかな?」


 ……。聞かない方が良かったのかもしれません。でも、聞かないと、なにかモヤモヤしたものが取り除けず、不安に押しつぶされ、胃の内容物がこみ上げてくる……、そういった感覚が小刻みに繰り返されます。何かに干渉され、俺以外の何かが、「意志」として問いかけた、そう解釈すればわかりやすいかな。


 あれ、「意志」だと……? 意志ってなんだ? 仮にこれが意志だとしても、まだ発生していない、未確定の意志だろう。あれ? 「意志だろう」? なんか、ニュアンスがおかしいね……。


 そもそも「意志」って、何だろうか。そういや……、最近のスマホには「深層学習」というのが搭載されていて、まるで「知能」を持つかのように振る舞うみたいなんだ。たしかに、すごく便利です。俺の堕落的な生活を手助けするように、全力でサポートしてくれます。


 でもね、でも……。その「深層学習」が自発的な「意志」を持つことはないですよね? どんなに優秀な学習機能を搭載してもさ、最終的にはゼロとイチからなる最小単位の情報に分解され、「記憶装置」に存在するだけのはず、です。そしてそれらが……自発的な「意思」を持つのかな?


 もし仮にでも「意志」を持つのなら、ゼロとイチ……、そうだよね、オンとオフのスイッチの塊が「自発的」に動き出すことになります。それは……ね? オンとオフで記述された論理通りに動く……これが精いっぱいのはずです。


 俺……、こんなで、「どうしても助けてあげたい」と思いました。このような感情すら、果たして「記憶」できるのでしょうか? それとも、俺みたいな単純な者なんて、簡単にスマホの内部にある黒いチップに収まるのでしょうかね……。すべて「記憶……シリアライズ」されてね。


 あれれ……。俺の頭の中に、このようなもの……、いつ入り込んだのだ? 俺が、記憶を失うほどに、何かにのめり込んだのかもしれません。


 でもそれならさ、なぜまともなトレードすらできていない? そんなお行儀が良い事なんて、する訳がないですね。でも、でも……、こんな内容、俺とは無縁なはずなんです。


 だから、どこかできっと、このような内容に関する学習みたいな時間を「強制的」に施されたのかもしれません。俺なので、強制されないと頭に入ってこないはずですから。


 あっ、ごめん……。自分の世界に入り込んで……お待たせしてしまいました。


「……。よろしいですか?」

「はい。」

「実は、です。わたし、『犬』を飼いたいというとんでもないわがままを、してしまいました。今でも、なんでだろう……です。たしか、薬が変わって、痛みが強かったからかもしれません。そのストレスで……、情けないのです……。」


 犬? 犬? 犬か……。


「……。痛みか。しょうがないよ、そんなのは。」

「もちろん、『犬』を飼うなど……論外です。そこで、わたしのパソコンに『犬』を入れてくださいました。」

「パソコンに、犬? えっ?」

「かわいい、犬です。そして、この犬なのですが、一応……『お金』と同じもの、みたいです。」

「えっ?」


 今、なんて? あっ……、それ!


「それ、俺も持っているよ! なんか、なかなかの価値があるらしいね?」

「はい。」

「えっ! それは……嬉しいです。わたしの犬、そう……『大切な犬』です。」

「今……なんて?」


 俺、思わず聞き返してしまいました。


「はい……。『大切な犬』です。」


 大切な犬……。これって……。

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