444, Sのラウンド26。おい、聞いたか? HODLだけが……助かるらしいぞ。
「おい、聞いたか? HODLだけが……助かるらしいぞ。」
「は? そんな話、いつの間に決まったんだ……?」
精霊の支配からの解放を望む民たちの間に……ひとつの噂が、静かに流れ始めた。それは、HODL。つまり、「仮想通貨を握っていれば、救われる」という噂だ。
もちろん、それは最初から……信じる者は信仰し、信じない者は決して寄り付かなかった。
「女神ネゲート様が言ったんだよ。『握っていれば救われる』ってな。」
「……まさか本気で、それを言ったのか?」
「なんだ、お前ら……女神ネゲート様を信じてないのか? あの酷い大精霊シィーから、俺たちを解放してくださったんだぞ。もう、忘れたのか?」
「……ああ。まあ、それについては感謝してるさ。あの大精霊シィーは、次から次へとおかしな政ばかりだったからな。」
「たしかに、大精霊シィーの政は悲惨だった。特に、推論、推論と叫び始めた頃から……さらに酷くなったよな。……あれで何がしたかったんだ?」
「ああ、そうだよな……。結局、俺たちなんて大精霊シィーから見りゃ、ただの奴隷だもんな!」
「でもよ……、最近の女神ネゲート様も……。精霊の支配からの解放を望む声が急激に大きくなった要因だってさ……。」
「最近の女神ネゲート様が、なにさ? 気にすんなって。もともと女神ネゲート様は、その御神託の通り『仮想通貨が全て』だからな。他は……どーでもいいのよ。」
「ならいいじゃねぇか! 俺は……キュートな女神ネゲート様一本だ。もちろん、今日も朝っぱらから……HODLを何度も叫んでるぜ!」
「そうだそうだ! 俺たちの未来は女神ネゲート様と、HODLにある!」
信じる者と、信じない者。その声が入り混じり……、結局「それ」は……「気になる存在」へと、昇格していった。




