441, Sのラウンド23。その原因は、チェーン構造……ブロックチェーンのパラドックスです。「真の量子耐性」をブロックチェーンに組み込むには……量子演算そのものが、必要になるのです。
フィーさんが淡々と語り始めた。その表情は、どこまでも暗い。量子アリスは、ひざまずいたまま、少しだけ顔を上げ、フィーさんを見つめている。
「……まず、結論から、なのです。その原因は、チェーン構造……ブロックチェーンのパラドックスです。『真の量子耐性』をブロックチェーンに組み込むには……量子演算そのものが、必要になるのです。」
ああ……なんだ、それ。背筋が凍るようなパラドックスだ。未来を……量子の脅威から護るためには、未来の量子演算が必要だった。そういうことなのか? 量子アリスは、ただ震えていた。
「ちょっと、……。……大精霊フィー様、それは……。」
フィーさんは、わずかに目を伏せ、息を整えた。
「わたしは……それを知った瞬間、決めたのです。……何だってする覚悟で、この回避策を探す、と。だから、動いたのです。あらゆるものを巻き込み、必死で抗った……。しかし、そんな都合のいいものは、因果律にすべて潰されたのです。未来を変える? それとも、未来を騙せ、なのです? ……そんな都合の良い概念なんて、一切、許されていなかったのです。それが、映し出された『現実』でした。」
……、……、……。沈黙。そのとき、俺の方をチラリと見た。
「それで……なんだい、フィーさん? そんな目で見られたら、気になるだろ……?」
ううん……、それって……。俺、もしかして……。いや、今はそれどころではない。……今、胸に刺さったこの違和感は……、とりあえず、心の奥にしまっておこう。