表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

439/567

438, Sのラウンド20。わたしが、女神として……新たなる神託を刻む時が来たわ。それは今後、暗号論的ハッシュ関数は……絶対に破れない。これこそが、量子と推論たちへの裁き。そう……仮想通貨は、不滅よ。

 女神は、静かに手を掲げた。その動きだけで、場の空気が張り詰める。そして……告げた。


「量子と推論たちの欲……そのすべてに報いを与える。わたしが、女神として……新たなる神託を刻む時が来たわ。それは今後、暗号論的ハッシュ関数は……絶対に破れない。これこそが、量子と推論たちへの裁き。そう……仮想通貨は、不滅よ。」


 女神の周りに群がる者たちと、そこから距離を置く者たち……その考えは、百八十度違っていた。前者は、いわゆる「HODL」と呼ばれる者たちだ。握ったまま、決して手放さない……その思想は、女神の神託に最も近い。彼らにとって、それは投資ではない。女神を守り抜く「信仰」なのだ。


 では、後者はどうだろう……?


「どう……これ?」

「俺はさ……問題を山積みにしたまま、また次に進むのかって、そう感じるんだよ。」

「これでさ、女神様女神様なんて言い始めたら、相場的に危ないだろ? 新興の銘柄でよくあるじゃん。」

「ほら、量子アリスちゃんが時々指摘してた、あの山積みの危機……『いつか解決する』っていう幻想。まあ……だいたい、そういうのって……。……たまりにたまって、ドンッにならなきゃいいけどな。」

「でもさ、暗号論的ハッシュ関数は、量子アリスちゃんの力では、絶対に破れないって、女神様が言ってるぜ。」

「そりゃ、言うさ。そこだけは絶対に、譲れないはずだから。」

「そうだな。言うだけ言って……、ラグプルなんて腐るほどあった。確かに、言うね。」


 ……その時だった。彼らの声を切り裂くように、場に冷たい気配が落ちる。一瞬で静まり返る空気……。


「おい。……。」

「……っ、あ、あの……女神様……?」


 女神が、その者たちに、冷ややかな声を投げた。


「……いま、『量子アリス』という名を、口にしたわね?」

「……あ、あの……。」

「……。」


 沈黙。重くのしかかる無言の圧力。まるで異端を裁く、冷たい尋問のようだ。


「す、すみません……その名は二度と口にしません。お許しを……。」

「……よろしい。だが……二度と発してはならぬ言葉が、もうひとつある。それは、タコと……イカだ。」

「……えっ?」


 唐突な禁句に、場がざわめく。誰も意味を解せず、ただ焦燥だけが広がっていく。


「……どうしたのかしら? その様子だと……普段から『タコタコ』、言っていたのかしら?」


 それだけを告げると、女神は静かに背を向けた。誰も声を発せない。ただ、残されたのは……かつてないほど重い圧力。その重さは、確かに根を張った。それは群衆の心に、深く……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ