437, Sのラウンド19。民の間で、精霊への反発は急速に膨れ上がっていた。「精霊から解放しろ」……そんな声が、次々と上がる。そこに加わるのは「カネ返せ」という叫び。……もはや、危険水域だ。
民の間で、精霊への反発は急速に膨れ上がっていた。「精霊から解放しろ」……そんな声が、次々と上がる。そこに加わるのは「カネ返せ」という叫び。……もはや、危険水域だ。
「本日は、お忙しい中、こうして集まってくれてありがとう! 私たちは……ただの民ではない。突如、支配者を名乗り現れた精霊どもに、奴隷のように扱われ、沈黙を押し付けられてきた者たちだ! もう、終わりにしよう! この不条理を……終わらせる! 私たちは立ち上がった。精霊からの解放に向けて、一歩、一歩……、前へ進もう!」
群衆に向けて、強いアピールが繰り返される。そのたびに、歓声が沸き起こる。熱が、街を包み込む……。
「やっと、この日が来たか。俺は、精霊だけは苦手だったんだよ。何もかも、見透かしてるみたいでな。いけ好かない奴らだぜ。」
「ほんと、それ! ただ……あの精霊の力、でかすぎる。逆らったら終わりだろ。まして、大精霊なんて……。」
「ああ、やっと本性をむき出しにしたな。あんな約束じゃ、ただ搾り取られるだけだ!」
「キャピタルゲインの九割よこせ? 狂ってるよな!」
「俺もそこでようやく目が覚めた……ふざけんな!」
そんな熱狂の中で……不自然な声が混じった。
「カネ返せ! あの精霊どもめ……カネ返せよ!」
「カネ返せ……!! 本気で返せよ!! 女神の通貨なんだろ!? ……なぜ出金できねぇんだよ!!」
「ああ、それな。たしか……仮想通貨だっけ? 入金も取引もできるのに、出金は数年後って聞いたぞ。」
「マジかよ……。やっぱり、あの連中にやられてたのか?」
「おいおい……そんなもん触るくらいなら、まだ銘柄の方がマシだろ?」
民は焦っていた。キャピタルゲインの九割が奪われる……そんな噂が独り歩きしていたのだ。もちろん、そんな利率になれば、元本回収は不可能。投資は死ぬ。……だから、本来はあり得ない話だ。だが……、いつだって、それを「材料」にして動く者がいる。
「まあ、精霊だしな。それくらいやるだろ。だって……精霊様だぜ?」
「でもよ、精霊らを統括する女神がよ……『これが最後で最高のチャンスだ』とか叫んでたぞ?」
「はあ? どうせ出金できねぇんだろ?」
「ははは。女神も必死だな。なら、乗ってやるか。でも、こまめに出金だ。欲を出すな。出金不能だけは、マジで地獄だからな。」
「こまめに出金、か……。でも、それを仮想通貨のままなんて……とんでもねぇ! 結局、大精霊の通貨に換金するしかないんだよな……。はあ……もう信用できるものがねぇ。結局、最後は……大精霊の通貨頼みかよ。」
「基本を忘れるな。投資家なら……儲けがすべてだ。だが、あの女神が必死になっているなんて……正直、嫌な予感がする。だからこそ出金できるうちに、こまめに動け! これが、最後の投資行動になるかもしれねぇんだ!」
「ああ、そうだ……神託に『何か』を追加するとか言ってたな。まあ、あの女神のことだ。きっと仮想通貨絡みだろう。……でも、それで何が起きる? はあ……嫌な予感しかしねぇ。」
そんな騒ぎの中……堂々と、その影が現れた。そう……あの女神だ。