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430, 量子艦アリスその十五。破られた前世代ハッシュ関数は、ただの「警告」だった。そして今、数学の女神は本気で裁きを下そうとしている……現世代ハッシュ関数そのものに。

 さらに、現実離れした現象を、量子アリスは目の当たりにする。


「これって……? ハッシュ値『0x8c255fca9ae6a40d3018c0b609841fe25c973bca』は、またサタンに近い。でも、短すぎるわ。」

「量子アリス様。実は……あの前世代の『破られたハッシュ関数』にも、サタンが存在していました。それが、その値です。」

「えっ……。これが、あの破られた……。やっぱり。連結脆弱性があるのなら、サタンは……必ず現れるのね。」

「はい、量子アリス様。さようでございます。あの前世代のハッシュ関数にも、構造的に連結脆弱性が存在していました。そして、その構造は……ほとんど同じなのです。」


 量子アリスは、一瞬だけ……驚いたように目を見開いた。


「それで、ルシファーは?」

「はい……それが問題です。実は、あの破られた前世代ハッシュ関数には、『サタン』しか存在しませんでした。」

「……えっ?」

「そのお気持ち、痛いほどわかります。私もこのときばかりは……硬直しました。つまり、前世代ハッシュ関数はまだ『サタンのみで済んだ』のです。ところがチェーンなどで現役活用されている現世代ハッシュ関数では、ビット長を拡張して安全性を高めたはずが、結果として……、数学の女神はそこに、『ルシファーをも遣わせた』ことになります。」

「……なにそれ。作り話にしては、よくできてるじゃない。」

「はい、量子アリス様。でも、これは作り話ではなく『現実』です。ハッシュ関数は決定論的ですから、ここでの観測は、誰でも再現できます。」

「……。」


 量子アリスは、凍えるような感覚に襲われる。だって、これでは……。


 破られた前世代ハッシュ関数は、ただの「警告」だった。そして今、数学の女神は本気で裁きを下そうとしている……現世代ハッシュ関数そのものに。そのときふと、気になる疑念がよぎる。


「ねえ……それで、計算量のシミュレーションは?」

「はい、量子アリス様。既に検証済みです。まず、破られた前世代ハッシュ関数については……この『サタン』を起点に、線形的に計算量が増加するモデルとして観察していく場合、その結果、突破点はおよそ十の二十乗、すなわち二の六十六乗程度となります。そして、実際に破られた記録も、この近傍であると確認されております。たしかにこれなら、古典でも破ることができますね。」

「…………。」


 量子アリスの緊張が限界に達していた。

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