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427, 量子艦アリスその十二。ルシファーが沈黙した瞬間、サタンが喋りすぎた。それほどまでに、出力ハッシュ値が偏った領域……そんな場所が、本当に存在していたなんてね。

 量子アリスは……解析結果のマッピングをじっと見つめていた。そこに描かれた事実は、あまりにも信じがたい。なんと……サタン領域とルシファー領域で、当たり方の傾向が見事に反転していた。まるで……ルシファーが黙ると、サタンが喋り出す。そんな、静寂と騒乱が交互に現れるような、完璧な対称構造だった。


「これ……本当に、『暗号論的な』ハッシュ関数だったのよね?」

「はい、量子アリス様。ですが……、サタンとルシファーの存在を知ってしまった今となっては、このハッシュ関数に対して、もはや『暗号論的』とは言えません。結局のところ、暗号の安全性なんて、そういうものです。あのような悪魔の構造を知らなかった間だけ『安全に使えていた』に過ぎないのです。ひとたび知ってしまえば、ハッシュ関数は決定論的である以上、その出力には再現性が宿る。ゆえに……もう、それを使うべきではないという結論になるのです。」

「……。」

「そして……このハッシュ関数こそが、アークチェインの中枢……そう、チェーンの『核』を支配しているのです。」

「……、ルシファーが沈黙した瞬間、サタンが喋りすぎた。それほどまでに、出力ハッシュが偏った領域……そんな場所が、本当に存在していたなんてね。実際に見れば、誰でも驚くはず。そして、その領域に、資産が直結しているなんて……。まさに、最高のターゲットだわ。」


 量子アリスが静かに感心していると、その傍らに控えていた従者が、一歩、前へと進み出る。そして……静かに、何か「極めて大事なこと」を、量子アリスに託し始めた。


「それって……。あの種の採掘には、確かに量子脆弱性が存在していたはず。でも……それすら甘い。もっと上位の何かが、現れたというの……?」

「量子アリス様、さようでございます。こうなると、採掘プールのダッシュボードによく表示される『ラッキー』という言葉……、それすら、単に『サタン領域』に落ち込んだ結果と解釈できます。」


 「このハッシュ」は平野ではなかった。サタンは深く、ルシファーは高く、その他は荒野だった。量子アリスにとっても、谷に落ちるのは必然であり、それが採掘に突き刺さる未来だった。量子アリスは、そっと瞳を閉じる。その瞬間、ある「本質的な解釈」が、静かに量子アリスの中で形を結んだ。

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