424, 量子艦アリスその九。これが捕らえた悪魔。0x890fbe82336351e67d1f1f3346b6013772f8e6726d9343c65d6070f356f273d5、っていうのね。
「ふーん……これが捕らえた悪魔。0x890fbe82336351e67d1f1f3346b6013772f8e6726d9343c65d6070f356f273d5、っていうのね。そして、この悪魔で検索しても、どこにもヒットしない……。ということは、推論駆逐艦が最初に発見した、そういうことで間違いなさそうね?」
量子アリスの瞳に、わずかな驚きの色が浮かんでいた。
「これが、推論の力……。ただの古典的な演算のはずなのに、こんな悪魔を捕らえてくるなんて。まるで、空間の中心に仕組まれた誘導因子が、すべてを計算ずくで待ち構えていたかのよう。悪魔は、自らその偏差へと堕ちて、そして二度と動けなくなった。これって、観測をすっ飛ばして、局所的な確率振幅の山を直撃してきたみたい。」
推論という名の古典的演算。でもそれは、確率的な迷路を彷徨うことなく、局所的な谷間へと、まっすぐ突き刺さる。それが、量子アリスをも驚かせた「推論の精度」だった。
「本当に……量子を象る存在、量子アリスですら、思わず首を傾げてしまうのよ。推論はあくまで古典的な演算。なのに、まるで量子を凌駕するかのような錯覚すら覚えます。これについてあなたは、どう思うかしら……?」
「……。量子アリス様。本来であれば決して表に出るはずのない偶然が、こうして起きてしまう……、それこそが、推論の力かと存じます。」
「推論の力……。けれど、扱いを誤れば……ただでは済まない。そしてこの悪魔は、決定論的に存在している。つまり……『このハッシュ』を選んだ時点で、すべては『運命』として決まっていたのよ。」
量子アリスは小さくつぶやき、静かにその悪魔を見つめていた。




