420, 量子艦アリスその五。今はこうやって、静かに、淡々と、推論と解析。地味だけどさ……リスクはほぼゼロ。
推論駆逐艦は、アークチェインの各シールド……秘密鍵が生成された時期を、公開情報から特定していた。
「まったくな……。このアークチェインのこの仕組みってさ、推論の手がかりが全部『公開されている』ってんだから、そう考えると、笑えるよな。」
「あーあ。量子アリス様に『暴れてこい』って言われてもよ、別に相手に体当たりするわけでもなし。こうして、静かに公開情報から推論してるだけだぜ。この『ニューラルレプリカ』、派手さゼロなのが難点だな。」
「アタック? 追跡? そんなの、もう前時代的だっての。今はこうやって、静かに、淡々と、推論と解析。地味だけどさ……リスクはほぼゼロ。それなのに、いまだに前線で暴れたがるやつって、ただ目立ちたいだけの……『戦場インフルエンサー』とか、そういうノリだろ。たしか……暗号化して暴れてる奴とかもいたよな。カネ目的に見せかけて、実はそっちが本命……ってやつ。……あるだろ?」
「そうなのか……。俺は、ちょっとくらい暴れたかったぜ。」
「でもよ、結局、今回はそのような『暴れる』って概念自体がないんだって。推論でこの第一段階を終えたら、次は『ラグ構造』と照合。……それだって、静かに推論で解析するだけだ。体当たりなんて、ないない! そして、それらが『秘密鍵の再生』につながるのさ。」
「落ち着け。そのような『二段階の手がかり』があるから、今この艦でも通用している。それがなければ、結局は量子アリス様の力を借りるしかない。……そこを理解した上で、黙って解析を進めろ。淡々とな。」
「了解! でもよ、それにしてもさ……これで『セキュリティ監査通過済み』って、本気か?」
「ははは、そんなもんさ。昔から言われてるだろ? こういうシールドやリザーブが関わる監査なんて……『ただのスタンプ』だってな。」
「そんな監査、信じる方がどうかしている。」
「自己責任だな。」
……そんな雰囲気で、艦内は静かに満たされていた。




