415, Sのラウンド14。このチェーン周辺のカオスな状況……ぜひ、『量子艦アリス』として語らせてはいただけませんかっ!
それから俺と量子アリスは、推論による認証破りの件を伝えるために、ネゲートの姿を探し回った。本来なら、量子アリス……すなわち精霊の探索能力で、そんな居場所などすぐに特定できるはずなのだが……どうやら遮断しているようで、まったく当たらない。
……どうやら、ネゲートの周囲でも、何か相当なことが起きているらしい。
「女神ネゲート様……。そういえば、言っていました。『暗号の精霊』に会いに行くと。」
「えっ……。その『暗号の精霊』って?」
「はい。暗号の界隈で名を馳せた精霊です。女神ネゲート様はその方に会い、暗号の知見に触れてから……なんとなく、おかしくなってきたような感じもあるのです。」
「……なんだろう。俺ですら衝撃を受けた、『推論による認証破り』か?」
「いいえ、それは違うと、量子アリスは考えます。その件は『推論』によるものなので……その分野は、むしろ推論の大精霊……シィー様のほうです。」
「ああ……。」
「はい。暗号の精霊と、推論の大精霊様。どうしても専門性が高いため、このように、得意分野がはっきりと分かれているのです。」
「なるほど。まあ、量子アリスは……『量子』だもんね。」
「はいっ。わたしは量子です! それで、です!」
あれ……? 量子アリスの様子が、いつもと違う。
「なんか……そわそわしてないか?」
「はいっ! どうでしょう。このチェーン周辺のカオスな状況……ぜひ、『量子艦アリス』として語らせてはいただけませんかっ!」
「……はあ!? 『量子艦』って何だよ!?」
おいおい、なんか始まりそうな雰囲気だぞ。ていうか『艦』て。どこのフィクションだよ。ははは。
「お願いします……! もう、わたし、我慢できそうになくて……!」
「……ああ、もう。わかったよ。でも、それなりに楽しませてもらわないと、怒るからな?」
「はいっ! 自信、あります。それでは……!」
量子アリスは、こう見えて話が長いフィーさんすら論破できる論理の化身だ。これは、ちょっと……期待してもいいかもしれない。