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412, Sのラウンド11……。フィーは……、この「虹色のビット長」に関する核心を、すでに知っていたってことになるわ。……それだけではなく、これ、なんと「二年前」の話よ。二年前……って?

 ビット幅が、虹色に「染まっている」……。最初、そんな感覚的な解釈しかできなかったわたしに、ついに……その本質へと通じる、重大な手がかりが姿を現したわ。それは、託された暗号研究の中に、確かに刻まれていたの。


 やっぱり……。これは、チェーンを破るのに、あの有名な量子アルゴリズムなんて、最初から使わない前提だった。そこに量子アリスの出番は、ないわ。それで、その瞬間に浮かび上がってきたのが、順方向の演算で秘密鍵を直接すくい上げる「秘密鍵ラグ構造」よ……。そこまではわたしだって、わかっていたわよ。


 ところが……。そこに、それを有利に進めるための、そこに直結する設計が新たに加わってきた。それが……どうやら「虹色」と関わってくるようなの。


 ……読み進めていくうちに、だんだんと見えてきたわ。これはどうやら「蓄積型」みたい……。つまり、過去の演算が無駄にならないってこと。


 そうね……。秘密鍵を奪い取るためには、もちろん、膨大な演算……労力が必要よ。でも、まず当たらない。その大部分はハズレよ。普通なら、そうして外れた演算なんてすべて「無駄撃ち」で終わるはず。けれども……この「虹色のビット長」だけは違ったわ。虹色に染まったその部分には、なんと過去に演算してきた成果を「蓄積」できる構造が、そこにあるということなのよ。つまり、外れたはずの演算が、別の機会で「別の秘密鍵」を奪い取るために再利用されるってこと……。もう……。


 ところが……チェーン側のアドレス空間の大きさは、不変。どれだけ時間が経とうと、どれだけ状況が変わろうと、そのサイズは「固定されたまま」、変わらないのよ。つまり「虹色のビット長」の演算が進めば進むほど、逆にこちらの逃げ場が削られていくということになるわ。……それはまるで、じわじわと包囲されていくような、そんな感覚……。それも、確実に。静かに。気づかぬうちに。


 そこで、わたしは……ハッとしたの。この暗号の精霊……。「虹色のビット長」について、とある大精霊と共同で緻密な調査を行っていたわ。……そして、その結果がここにあるのよ。


 まあ、それは当然なのかもしれないわね。だって、これは暗号研究の成果で、それがわたしに託されたのだから。それで……ここに記載されている「とある大精霊」の特徴。いったい、誰かしらね……。


 えっ……、……。時間と空間を巧みに操る能力? 女神の候補? もう、それって……もう……フィーじゃないの!!


 ああ……、血の気が引いていく……。つまり、フィーは……、この「虹色のビット長」に関する核心を、すでに知っていたってことになるわ。……それだけではなく、これ、なんと「二年前」の話よ。二年前……って? ううん、ちょっと待って。それって、まさか……!


 そうよ、二年前……。わたし、あの頃のこと……鮮明に覚えているわよ! 現物型のあれで、シィーの承認が得られるかどうかで、この界隈は騒然としていたわ。


 それで、事前に暗号の安全性を徹底的に調べていたのね……。そして……わたしは、この「虹色のビット長」についてなんて、何も知らされていない。だから知らなかったわ。でもそれって、つまり、その調査結果は「闇に葬った」ってことよね……? だって、女神であるわたしに対して、こんな大事な調査結果を何も伝えていないとは……、そういうことになるわ。


 それって、「これはまずい」と判断した上で、「特に問題なく、何も無かったこと」にしたってことなの……? そんなの、裏切りじゃない……!

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