408, Sのラウンド7……。今のこれでは……、まるで……「破壊と創造を伴う最大のビジネス」が、誰かの手によって静かに仕掛けられているみたい。通信も、通貨も、そして「秩序」さえも……。
「さあて、始めるわよ。」
もともと、鍵集めは避けて通れない。そう自分に言い聞かせて、託された暗号に関する研究成果の解読に取りかかった……まさに、その矢先の出来事だった。
わたしは、ずっと気になっていたわ。……そう、はるか空高くを舞う、いわゆる「風の頼れる精霊」と呼ばれる存在たちのことを。その力で、どんな辺鄙な場所でも通信ができる。それがその精霊の利点だと言われているんだけど……。でもね……、それにしては数が多すぎるのよ。数が、ね。
そんなものを、空にどんどん飛ばしていたら……わかるでしょう? そんなの面白くもなんともない地の大精霊たちから、わたしは……、痛烈な批判を受けてしまったのよ。「次の『風の大精霊による地の大精霊の監視網』には、今度は、あのようなおぞましい仕組みが使われるのか。お前、それでも本当に女神か? それを、お前が承認したのか? 何か、言ってみなさい?」ってね。
まあ……わたしも「風」だし、疑われても仕方ないのだけれど。でも……あのミームだってそうよ。女神の立場で、あんなことができるわけないじゃない……。
それでも、疑いを晴らすには……材料があまりにも乏しい。かといって、この場で地の大精霊に肩入れなどすれば……あの「ディール」を叫ぶミームな精霊が現れてしまう。もう……。たとえ女神として覚醒したとしても、この均衡を保つには、何が最善なのか……まだ、見えてこないわ。
ただでさえ、地と風は一触即発の空気なのに……。なのに、これって……いったい、何をやっているのよ。そんな気持ちが、わたしの中で次第に膨らんでいったわ。たしかに、通信は大切。ときにそれは、貧富さえも分ける力を持つ。わたしだって、それくらいわかっているつもりよ。
……でも、今のこれでは……、まるで……「破壊と創造を伴う最大のビジネス」が、誰かの手によって静かに仕掛けられているみたい。通信も、通貨も、そして「秩序」さえも……。一度、壊さなければ……新しく塗り替えられない、そんな発想の元に。……ちがう。何を言い出しているの、わたし。言葉にすればするほど、自分が疑いに染まっていく気がして、苦しくなるわ……。
でも……先日の「あれ」だって、もし失敗していたら? そのまま「最大のビジネス」に移行して、全責任を……女神のわたしに押し付けるつもりだった。そして、成功すれば手柄は自分へ。……ああ、この流れ、この構造、この先も……まだまだ続いていくのね。
それで……成功したつもりだったのでしょうけど……その……。狙われた地の大精霊だって、黙っていなかったのよ。その矛先は、そう……はるか空高くを舞う、「風の頼れる精霊」に向かい始めたわ。「あんなもので通信など、あり得ない。絶対に使ってはならない。」……そう言い放ってね。そして……あれらを使ったことがもしも表沙汰になったら、「全員、覚悟はできているな?」ってね。地の大精霊の地域一帯で叫ばれる「覚悟」ってね……そう、あれしかないのよ。まあ、そうね。ああいう諜報機関で本当に生き延びようと思ったら……命が何個あっても足りない。それが映し出された現実よね。
それでも……わたしは、女神よ。それゆえに、風の精霊ばかりを優遇するようなことは、決してしないわ。だからこそ……わたしは「地のチェーン」を受け入れた。この場で、再び風の影響力が色濃いチェーンを選べば……それこそ、また新たな軋轢を生むだけよ。だから、ここで線を引いたの。
わざわざ、わたしの力を使って「七のぞろ目」に揃え、その受け入れを正式に表明したのだから……もう、あのシィーですら文句は言えなかった。でも……それが、まさか「あんな形」になるなんて。そもそも、どうしてあのとき気づけなかったのか。それはきっと、信じていたから。そして、今もその信頼は……たぶん、変わっていないはず。そうね、この辺りの経緯も、暗号の調査に加えておくべきだわ。




