404, Sのラウンド3……ああ、来たわね。二年、三年……、そんな短さで破られるかもしれないって。それはつまり……採掘の脆弱性や、百六十ビットのアドレス幅……順方向から「推論」する形での突破。
引っ掻き回し始めたと思ったら、急に……、まるで手仕舞うように、すっと引いてきたのよ。驚いたわ、本当に。それは、まず火をつけておいて、それを自分で消火しているみたいに映ったわ。……どうやら、これは「時代を創る大精霊の力」を最大限に活かす戦法みたいね。
でもね……、それって、うまくいけば「強くて当たり前」っていう概念を、思う存分アピールできると思うわ。大満足でしょうね。……だけど、ねぇ? もし失敗したら? ねぇ? どうするつもりなのかしら? つまり、成功したら全部「自分の手柄」。でも、失敗したら……全部、女神であるわたしに擦り付けてくるってことよね!? なによ、それ……。
そして、そう……量子よ。最近、妙に静かにしていると思っていたら……、やっぱり、出てきたわね。
今度は、「量子ビットの数」ではなく、具体的な「年数」を示してきたの。「破られる可能性」……それが、ついに言及された。
その年数は、二年から三年。……これ、フィーと「チェーンの量子脆弱性」について話していたあの頃の予測と、完全に一致してるのよ。つまり……量子の精霊は、もはやあの有名な量子アルゴリズムなんて眼中にないわ。狙っているのは、推論でも破れるかもしれないあの「秘密鍵ラグ構造」……そう宣言されたも同然だわ。
それもそのはず。今の量子はまだノイズが大きく、二百五十六ビットから二千四十八ビットをピンポイントで破るなんて、至難の業よ。実現できても、その演算時間は理想的な状況で数日から一週間程度、現実的には数か月、あるいは数年かかるかもしれない。
それでも「理論上は破れる」から、量子の優位性は確かにあるわ。……でもね、それだけではチェーンに対する脅威とは言い切れない。
だったら……ノイズがあっても破れる可能性の高い、「量子探索系」を成す「秘密鍵ラグ構造」を狙ってくる。そう予想していたけれど、今こうして「二年から三年」の数字を出してきた時点で、それが狙いだと、ほぼ確定したと見ていいわ。
それはつまり……採掘の脆弱性や、百六十ビットのアドレス幅……順方向から「推論」する形での突破。
今まで考察してきた流れが、いよいよ現実味を帯びてきたの。……そもそも、採掘なんて古典でも解けているわ。解に「寛容性」を持たせて古典でも成立するよう調整されてる以上、量子にとってはあまりに簡単すぎる。だから……量子が採掘を始めたら、終わりよ。
早すぎて乗っ取られ、信頼性が失われる。さっとまとめると、そういう構図よ。
……そして今、正式な量子の勢力、つまり……わたしに敵対する量子が動き始めたわ。時間は、もう残されていないの。採掘の精霊は、早めに「あの機材」を切り捨てるべきかもしれないわ。
残るは……百六十ビット。あれは、推論でも可能性がゼロではない。なぜなら、すでに百六十ビットのハッシュ出力が実際に破られた事例が存在するからよ。
そしてあの構造……秘密鍵からつながるハッシュの百六十ビット。この流れの中に、どんな「偏差」や「脆弱性」が潜んでいるのか。しっかり調べておかないと、本当に取り返しのつかないことになるわ。
現時点で稼働できる推論でも、過去に破られた百六十ビットの事例が実証となってしまうので、ワンチャンスあると言い切れてしまう。それが量子ならもう……十分すぎる脅威なのよ。