403, Sのラウンド2……その精霊って、表では「貧困層に寄り添う姿勢を見せつつ」も……、その裏ではこんな策略を張り巡らせている。
女神って……もしかすると、何かの贖罪かもしれないわ。もともと、平時は「この地を見守るだけの存在」で、大精霊として笑顔でゆっくりと過ごせるのに……、この地に危機が訪れるときだけ、女神として現れるのよ。
……でも、たとえそれが覚醒したとしても、また、ここで同じことが起きようとしているわ。
今回のは、大精霊同士が衝突するように、巧妙に仕向けられていた。闇の勢力とは違い、表から堂々と仕掛けてくる。あからさまな「パフォーマンス」を含めて、すべてが演出のようにも見えてしまう……。
……それでも。どれほど演出に見えたとしても、深刻な現実は、映し出された現実として起きてしまう。
その一線を、あろうことか……闇から時代を奪い取った側が、自らの手で越えてきたなんて……。なるほど……そういうことだったのね。平和を語ったのは、わたしを取り込むためだった、ってことね。
さらには……よりにもよって、あの「終末寸前」にまで至った衝突の始まりと、同じ日を……? わざと? それとも……偶然を装った挑発なのかしら? ずいぶんと、趣味が悪いわ。
……しかも、報道されるタイミングまで、見計らってやったのでしょう? 偶然に見せかけて……すべてが仕組まれていたなんて。
……。それで、ちょっとこれは、考えること自体、どうかと思うのだけれど。あのミームな精霊が、ここまで緻密な策略を練れるとは、とても思えないのよ。とっさの判断で、あの日と同じ日付を狙ってくるなんて……それこそフィー並みの感覚がなければ不可能でしょう? ねえ、そうよね? 常に「行動と直感とディール」が先に立つ、あのミームな精霊が……、こんな筋書きを描けるかしら?
それに、この趣味の悪さよ。なんというか……ただ目立ちたいだけで、ここまでするとは考えにくい。あの日と同じ日を、わざわざ選んで圧力をかけるなんて……。そんな回りくどいやり方、あのミームな精霊の性には合わないわ。むしろ、そう、なんだか……ジメジメしてる。陰湿で、冷たくて、まるで「湿った手紙」みたいな感じ。これって……。
そして、あのミームな精霊は……それに気づくこともなく、今も「その筋書き」を実行中よ。そして……、その参謀の術中に嵌められ続けているのよね。
さらに……これはフィーに確かめるべきかもしれないけれど、どうしても二の足を踏んでしまう。やっぱり……あのときのフィーとのディールで、あのミームな精霊は丸め込まれ、醜態を晒してしまった。
そのため、「強くて当たり前」の概念を大急ぎで民に見せつけるために、あのような行動に出始めた。そんな仮説を、仮想通貨のコミュニティの片隅で見かけたわ。……正直、否定できなかったわ。
そんなの、ディールではないわ。初めから「丸め込んではならない」なんて強いられるのなら……それはもう、「時代を創る大精霊の力」に頼るしかなく、見せかけだけが「ディール」の形をしていても、実際はただ要求を呑むしかないという……乾いた砂のような、虚構の儀式になってしまう。
でも……あの目立ちたがり屋のミームな精霊にとって、こんな丸め込まれ方は、屈辱でしかないはずよ。だから……その屈辱すら計算に入れて、思い通りに動かしている者がいるとしたら……?
相手の性格、欲望、反発心。それらすべてを巧みに操り、あたかも自分の意思で動いたように見せかける……。つまり、最初から、相手がそう動くように立ち回っていた精霊こそが、背後にいて、その者こそが……?
それでも、やり過ぎたわ。そう……、やっぱり、話があまりに出来過ぎているのよ。すべてのピースが、綺麗に揃いすぎた。つまり、この一連の混乱によって最も得をする者……、すなわち「本来は絶対に手にできなかった力」を得ようとしている精霊が、その背後にいるってことが、この件で確定したわね。
もう……。その精霊って、もともと……。こんな策略を練るだけの能力を常に持ち合わせていて、表では「貧困層に寄り添う姿勢を見せつつ」も……、その裏ではこんな策略を張り巡らせている。そんなふうにも、見えてしまうのよ。そして、相手の懐に入り込むのがやたらと上手くて……。それに、どこかに「大きな野心」がある。いつだって「もっと先……時代を創る大精霊」を見ているような、そんな気配が、ずっとしていた気はしたわ。
綺麗すぎた。整いすぎていた。……これが、黒幕……最も遠くにいるはずの者の顔だったなんて。
たしかに……これは、古の時代から言われているわね。綺麗すぎる者ほど、危ないって。……古来より、美しすぎるものには毒があるとされてきたわ。完璧な構図ほど、民は疑わず、嵌まるものだから。