402, Sのラウンド1……邪神を捨て、闇をまとう者たちは今……闇の女神のもとへと集う。
闇に染まる女神コンジュゲートを取り囲むように、「闇の重鎮」と称される精霊たちが、密かに集まり始めていた。そこは、邪神イオタでさえ干渉を許されぬ……大過去の一部領域。女神コンジュゲートは、その空間の一部を押し広げ、闇の精霊たちを迎え入れたのであった。
「女神コンジュゲート様。ここに集まりし者たちは、皆、同じ志を抱いております。闇の勢力の今後、ぜひ女神コンジュゲート様にお任せしたい。……この数年の邪神イオタ様は、少々、狂いが過ぎた。計画は破綻し、時代すら奪われた……その動揺が見え隠れしております。」
「おぬしも、そうか。わしが聞いた話も深刻じゃ。どうやら邪神イオタ様は、大精霊たちが互いに潰し合う未来を心待ちにしていた……そんな噂すら耳にした。だが、その目論見は、時代を奪われたことで潰えたはずじゃ。」
「大精霊が、皆で衝突だと? 冗談じゃない。その戦禍に民が巻き込まれれば、我ら『闇の商い』は立ち行かぬ。闇とはいえ、この地の崩壊を望む者などおらぬわ。『搾れる民こそ宝』よ、違うか?」
「まったくだ。最近では、一部の量子の精霊が光に寝返ったなんて話も聞こえてくる。中には、その姿をくらました者まで出ているようだ……。」
「量子の精霊が……、その姿をくらました? それは……さすがに、まずいな。まさか……古を名乗る『地の大精霊』の管理下へと逃げ込んだのではあるまいな……?」
邪神イオタに対する不満が飛び交う中、女神コンジュゲートが、静かに口を開いた。
「たしかに……邪神イオタ様は、変わられてしまったのかもしれません。それでも……いま、こうして『闇』に在れるのは、いったい誰のおかげですか?」
一瞬、空気が凍る。
「そっ、それは……。」
「……また、闇ばかりに、そのような穢れを集めてはなりません。むしろ、表向きには『平和』を軽々しく語りながら……、闇から時代を奪ったあの精霊たちを見てください。そう……、闇が時代を奪われて、どれほど経ったでしょうか。今でもあの精霊は『時代を創る大精霊』と呼ばれることもなく……、その自覚も、まだ霞の中です。その足元には……かつてないほどの、特異点らしきものが立ち上っています。」
女神の瞳は、遥か彼方の時空を見据える。
「そこには、闇すら恐れるに足りないほどの……おぞましい『何か』が、静かに、集まり始めています。その気配を感じてはいませんか? もし、闇の勢力が時代を担っていたのなら……ひとまずは、『安価な労働力の選択』で収まっていたでしょう。もちろん、それも永続可能ではありません。市場が回復し次第、私たちは然るべき是正を行うつもりでした。」
その声は淡々としていたが、奥にははっきりとした怒りがあった。
「……けれども、闇から時代を奪ったあの精霊たちは、もはや『取り返しのつかないもの』にまで、手を伸ばしてしまった。調和を忘れ、あの『大過去』をも切り捨てたのです。それでも……。」
少しだけ、女神の表情が和らぐ。
「……、こうして闇として私を慕ってくださった。そのこと自体は……とても、うれしく思います。」
邪神イオタの顔を立てつつも、巧みに言葉を選び……女神コンジュゲートは、闇をまとう者たちの心を確実に引き寄せていった。
それは、「否定」ではなく「導き」として。混乱と不信に満ちていた「闇の重鎮」と称される精霊たちの目に、次第に安堵と確信が戻っていく。
やがて……、満足げな表情を浮かべる者たちに囲まれながら、この小さな集会は、静かに成功を収めた。それは、嵐の前の静けさにも似た、だが確かに、闇の未来を方向づける「決定的な一夜」だった。




