400, そのように闇の勢力が生まれ変わるのなら、少なくとも……インフレで制御不能に陥った「不換なる通貨」をリセットする目的のために、血が流れるよう仕向ける……そんなことは、もう起きないはずです。
そういえば、この量子の精霊……。時代が変わる前、一度だけ見かけた記憶があるのよね。たしか……、ううん、変化の直前、あの時だったわ。
「ねえ。やっぱり気になるのよ。今日はなんだか、わたしのことをやたらと持ち上げてくるじゃない? もしかして、わたしが覚醒したから、『今のうちに、女神ネゲート側についておこう』って、そんな魂胆があるのではないかしら?」
「女神ネゲート様……。そうやって核心を突いてくるあたり、やはり……女神コンジュゲート様を彷彿とさせます。」
「あら、コンジュ姉って、闇の中でも相当な影響力を持ってるわよね? あの立場……女神でもあるし。」
「はい。それが……、影響力というより、もう次元が違うと申しましょうか。ここだけの話ですが、闇の勢力が分裂するかもしれないのです。」
「えっ? それって……まさか。」
「はい、女神ネゲート様のご想像の通りで、邪神イオタ派と女神コンジュゲート派に分かれる可能性があります。もちろん、これは極秘の話です。女神コンジュゲート様ご自身は、あまり乗り気ではないのです……。ただ、その考え方の違いに共鳴した闇の者たちが、女神コンジュゲート様のもとに集まり始めている、そうお考えください。」
「なるほどね。ここで……大事なことを聞くけど、あなたはどちら側につくつもりなのかしら? でも、言わなくてもわかっているわ。あなたは当然、コンジュ姉側よね? だって……大精霊シィーが邪神から不当な扱いを受けていたことに、あなた、納得していなかった。だから消去法でコンジュ姉になる。違うかしら?」
「そ、それまでお見通しとは……。」
ふふっ。これでようやく納得できたわ。なぜ今日、この量子の精霊が急にわたしを持ち上げ始めたのか……その理由がね。
この量子の精霊……。そういえば、かつてはシィーの傍らで、量子やマジックショーなどを取り仕切っていた存在だったのよ。そして、時代が変わり……誰であろうと受け入れる闇の勢力へと、いつの間にか流れ着いていた。なるほど、そういうことだったのね。
「それで、コンジュ姉が闇を統治するようになれば、闇の勢力も少しは変わるかしら?」
「はい。そのように闇の勢力が生まれ変わるのなら、少なくとも……インフレで制御不能に陥った『不換なる通貨』をリセットする目的のために、血が流れるよう仕向ける……そんなことは、もう起きないはずです。」
「……。さらっと、ものすごく恐ろしいことを言うわね? それでも、あなたは少なくとも、そんな血の流れ方には反対なのね?」
「……、少なくとも今は……。ところで女神様、そもそも闇の者はみな血を好む存在、というのは大きな誤解です。闇の勢力とは本来、過去を問わずにどんな者でも受け入れる……その寛容さこそが力の源なのです。そのため、血が流れることと、闇に加わることの間に相関は存在しません。そこはご安心ください。」
……なるほど。そうよね、わたしったら……。コンジュ姉だって、闇堕ちしてそこにいるのよね。そんなコンジュ姉が、血を好むはずがないわ。……うん、納得。




