397, その量子で何ができるのか、と問われて……その最初の答えが「秘密鍵を破ります」って? それを進歩だと? その研究、本当に道義の上に立っているのか、一度でも考えたことはあるのかしら?
さーて……、予想通りの展開になってきたわ。結局、あの「量子の二千四十八ビット」の件で……わたしは、覚醒したのよ。別に、どう言われたって構わない。「いよいよ女神様は開き直ったか」なんて、好きに吹聴でもすればいいわ。
……それで、また来たわね。あの量子の精霊。
本当にもう……、量子の精霊同士で口裏を合わせて、毎月、交互にわたしに量子をぶつけてきていることなんて、とっくにバレているのよ。それで今度は、何かしら? ……ううん、もう内容はだいたい読めているわ。それくらい、量子の手の内なんて見え透いてきたのよ。
「それで……今日は何の用かしら? 前回の、あの派手な『挨拶』には……さすがに面食らったわよ。」
「このような量子のことを、覚えてくださったとは、女神ネゲート様。心より感謝申し上げます。」
「なによ……。あんたのことなんて……、忘れようとしても、忘れられるわけがないでしょ。それで、今日はなにかしら? 量子アリスのことを言いたいわけ? やっぱり、あんたも絡んでいるのね。それでまた、あんたの量子の進捗を延々と聞かされる、わたしの身にもなってみなさいよ? ほんと、少しは面白みのある内容にしてくれないかしら。」
「面白みのある内容ですか……ご要望としては理解いたします、女神ネゲート様。ただ、純粋な量子を追い求めますと……どうしても、観測されるのは退屈な時間ばかりでして、頭を悩ませております。」
退屈な時間ばかり? ……あのね、量子の精霊たち。この半年間の様子、わたしはずっと見てきたのよ? 量子のネタを出しては、まるで遊ぶようにわたしを弄び、楽しんでいたのでしょう? そう、とっても楽しそうに次々と量子をぶつけてきて……。わたしが悩み、苦しむ姿を、しっかり観測して……満足げに、ね。もうそれくらい、とうにお見通しよ。
「その量子で何ができるのか、と問われて……その最初の答えが『秘密鍵を破ります』って? それを進歩だと? その研究、本当に道義の上に立っているのか、一度でも考えたことはあるのかしら?」
……、……あら。思わぬわたしの反撃に、量子の精霊ったら……少しばかりのけ反ったみたいね。でも、わたしは女神として覚醒したのよ。もう、以前のようなダメでゆるい女神なんて言わせないわ。




