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393, ここまで上手く運ぶとはな……。だが、これも必然だ。強大な力を持つ女神と邪神を屈服させ、私が頂点へと登るためには……この方法しかなかった。この地において、私の知略を凌ぐ者など存在しない。

 ここは……。昼は賑わいに満ちるが、夜ともなれば一転、厳粛な静けさに包まれる。そんな場所に、我が物顔で佇む者がひとり……。


 すでに勝利を手中に収めたかのような表情を湛え、配下たちを従えながら、静かに言葉を交わしているのであった。


「ここまで上手く運ぶとはな……。だが、これも必然だ。強大な力を持つ女神と邪神を屈服させ、私が頂点へと登るためには……この方法しかなかった。この地において、私の知略を凌ぐ者など存在しない。」

「これはこれは……。この地の頂に立たれるのは、まさにあなた様こそがふさわしい。どうか、その瞬間を、この目で見届けさせていただければと。」

「まあ、焦るな。こうした舞台というのはな、あまりに急げば、足元から崩れ落ちるものだ。」

「……お見事にございます。」


 満足げな表情を浮かべる、忠実なる配下。


「強大な力を持つ時代を担う女神と、あの邪神を屈服させるには……そう、我ら精霊の手からでは直接触れることすら叶わぬ。ゆえに、両者を正面からぶつけ合い、互いに討たせる必要がございました。まったく……お見事というほかありません。無様なほどに完璧な策略。確かに、あれ以外に手はなかったと、今さらながら痛感いたします。」

「まさか、この状況で『仮想短冊の通貨』を利用なさるとは……。そんな奇策、過去にも未来にも……思いつくのは、あなた様ただおひとりでしょう。」

「ふむ……。それについては、女神があの手の通貨に熱中していたという事実が、鍵となった。ちょうど邪神が『仮想短冊の通貨』を忌み嫌っていたからな。そこで私の知略が閃いた。この両者、これでぶつけるしかないとね。」


 さらに満足げな表情を浮かべる、忠実なる配下。


「ああ……あまりの滑稽さに、つい笑いがこみ上げてしまいますよ。邪神の一味は、あの通貨……『仮想短冊の通貨』を抑え込もうと、必死の形相で叫び散らしていたではありませんか。『量子は今年からだ』などと声を荒げながら、女神に対して次々と量子をぶつけ……、ははは。それこそ、まさに狂気の沙汰。無理もありません。ようやく育て上げ、今まさに『闇の花』を咲かせんとしていた『不換なる通貨』から、価値がごっそり抜かれ、あのような通貨へと流れ込んでいたのですから。あのまま『不換なる通貨』が破裂してこそ、闇の時代が始まる……。それが奴らの筋書きだった。それを壊される位なら……そりゃあ、量子でも何でも女神にぶつけて、潰し合わせに出るのは当然というものです。」

「……ふむ。この地が闇に呑まれるなど、あってはならぬこと。私は必ずや、この民を、正しき未来へと導いてみせよう。」


 これこそが……、我らが忠誠を捧げるお方。我らの頂点にふさわしい。配下たちは、その思いを深く胸に刻み込みながら、静かに、しかし力強く、噛みしめるのであった。


「さらに素晴らしいのは……そう、あの精霊をミームに仕立て上げたことでございます。あなた様の、その卓越した知略こそが、この地を救う鍵に他なりません。」

「ふむ……。当初は反対していたらしいが、所詮はその程度……カネとラグプルで黙らせたといったところか。重要なのは、腐りきった精霊に、そのミームを捧げる構図に仕立てたこと。そうでなければ……女神コンジュゲート様の失態を上回ることができなかったからな。それを上回ってこそ、あの精霊は『時代を創る大精霊』の座から引きずりおろされ、私のもとへと力は流れ込む。……、当然の帰結だ。それにしても……まさか、時代を担う女神までもが腐りきった精霊たちのミームであったとは。はははっ! その瞬間、確信したよ。時代は常に、我が手にあると。」

「……まさに。偉大なる知略には、時代そのものが微笑むのです。」

「ふむ……。これで、古の大精霊にも、再び幅を利かせる余地が生まれよう。ちなみに私は……『秘密鍵のラグ構造』には寛容の立場だ。たったそれだけで、あの古の大精霊すら手中に収まるというのなら……これは、安い取引ではないか。そもそも私は、正義の旗の下で戦うような類の者ではない。いくばくかの大精霊が消滅することになるだろうが……それもまた、避けがたい犠牲にすぎぬ。ほら……こうしてみると、ミームとは『量子ビットの炸裂』にも匹敵するものだ。その破壊力は……、目を見張るほどだぞ。つまり……、ミームごときで大精霊が消滅する事態に発展しそうだとはな。誰も、そんな筋書きは思いつくまい。……ふふ、滑稽なものだ。さあ……消滅候補は、誰になる? ああ、そうだな。あの人形など、もはや見る影もない。助かる見込みなど……ない。となれば……、そうだな。案外、あの女神にそっくりな、銀色の髪をなびかせながら独特の口調で数を語るあの大精霊も……その消滅候補かもしれんな?」


 その瞬間、配下たちはひざまずき、改めて忠誠を誓った。頭を垂れ、深々と礼を捧げる。その動きには、一切の迷いもなかった。

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