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383, 言われてみれば、思い当たる節が多すぎる。なぜ、こんな状況になっているのか。わざわざ、悪い方を選ぶ必要なんてなかったはずなのに……。なのに、なぜか「そちら側」に進んでいた気がする。

 もう、俺の目の前に立っているのは……あの、ゆるさをまとっていた頃の女神ではない。今ここにいるのは、この時代を担う女神様だ。覚醒した存在として、完全に整っている。


 ……正直に言えば、少しだけ寂しい気もするさ。でも……これは、女神としての本質が、ようやく姿を現したということだろう。これで、攻勢に転じることができる。そんな、確かな予感がした。


「もう、大丈夫よ。わたしに任せなさい。邪神が……その気なら、こっちだって受けて立つわ。今度こそ、あの忌まわしき因果も、この構造も……すべて、断ち切る。この時代を任された女神として……。」


 それからネゲートは、今も「恨まれている本当の理由」を、淡々と語りはじめた。


「今でも恨まれている本当の理由……。まず、女神という存在が現れるのは、この地の危機のときだけ。もし穏やかな時代なら、女神は静かにこの地を見守るだけでよかったはず。そして、それなら……大精霊だけで十分だったのよ。つまり、邪神が女神を打ち破りたくても、そもそも女神が現れないのなら、それは不可能だった。そこで、邪神は考えた。女神が長期的に現れ続ける構造をつくるには、どうすればいいのかを……。そして、その答えをみつけてしまった。それが、やりたい放題の精霊たちを巧みに利用することだったのね。」

「つまり、それってさ……。『女神が必要とされる、危機の時代』を長引かせるってこと? おいおい……。」

「そうよ。危機の時代を維持するなんてね、それこそ信じ難い内容よ。でも……、それが邪神の望みでもあったわ。もともと、あのような存在は……そういう状況を『欲して』生まれたものだから……。」


 ……その言葉は、俺の深層に眠っていた何か……記憶の痕のようなものに、静かに触れてきた。なぜだろう。どうしようもなく、心当たりがある。


 そうなんだよな。言われてみれば、思い当たる節が多すぎる。なぜ、こんな状況になっているのか。わざわざ、悪い方を選ぶ必要なんてなかったはずなのに……。なのに、なぜか「そちら側」に進んでいた気がする。


 ……いや、違う。それは、進まされていたのだ。それも……、危機の時代を維持したい「邪神の思惑」によって。俺たちは、気づかないうちに、邪神が用意した構造の中で、ずっと動かされていたなんて。


「さらに、邪神は狡猾で、計算高いのよ。」


 ネゲートは静かに語りながら、確信のこもった目でこちらを見る。


「自らは眠りにつき、その手は絶対に汚さない。その代わり、下僕と化した者たちにすべてを負わせるの。今、思い返してみたら……まさに、そんな構図だったわよね? もし、シィーが目を覚ますことなく、うまくわたしを丸め込んでいたとしたら……わたしは、破られたわ。そして今頃は……闇の女神として、コンジュ姉の隣に君臨していたのかもしれないわ。その結果、安価な労働力がまん延し、この地は完全な闇に包まれていたことでしょう。」


 コンジュ姉……か。


「……でも。邪神って、そんな不確実性に賭けるほど甘くはないのよ。もし、女神に時代を奪われたのなら、いつでも自らが復活できるように。最初から、そういう算段でやってきていた。それが邪神という存在よ。」

「でもさ……邪神がここまで目立つなんて……。それって、黒幕が直に動いてる非常事態ってことだよね?」

「たしかに……。そういう見方もあるわね。」


 ネゲートは少し間を置いてから、静かに答えた。


「ただし……、これだけ積極的に動いている時点で、逆に注意が必要よ。わたしも、そこが気になっていたの。正直……ちょっと動きすぎなのよ、あの邪神。あれでは、『自分が黒幕です』って周りに言ってるようなものよ? でも、本当の黒幕って、そんな露骨な動きはしないものよ。最後まで触れられないか……、それとも、ほんのわずかにしか痕跡を残さないか。黒幕とは、本来そういう存在よね? それでも、わたしを打ち砕きたいという意思。それだけは、間違いなく感じるわ。」


 ……つまり、邪神の背後に、さらに「何か」が存在する可能性があるってことかよ……。

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