378, つまり、こういうことだ。実質、この地の経済を握っている闇の勢力に、最初から踊らされていた……そんな可能性すらある。
あの女神の周囲にある関係性を、改めて整理してみた。そして、ようやく一つの像が、輪郭を持ちはじめた。これこそが……量子の本質なのだろうか。
我らは量子に対して、かねてよりこう捉えてきた節がある。同時に多数の状態を保有し、そして最後にそのすべてを定めるのは、観測という名の「意思」なのではないか……と。
その意思こそが、求めるべき答えの期待値を導く……。そう、わずかながら、我らはそう解釈してきた。そしてもし、その意思が本当に存在するのなら、それは、本来なら得ることができなかった結果を、手にすることができてしまうということでもある。……それが、我らにとって最大の恐怖でもあったのだ。要するに、先手を取るしかない。それが、今この局面での唯一の答えだ。
それでも……なんという状況だ。「光」と「闇」が、量子の上で……、まるで踊り合っているとでも言いたいのか? ただし、今のあの女神の状況こそが、量子とはそのような存在であるという論拠にすらなっていた。だが、我らはその仕組みを……巧みに活用するために、ここまで来たのだ。とにかく、量子アリスよりも先手を打てばいい。それだけのことだ。
「これは……。だいぶ前から、闇には見透かされていたのかもしれないわね。」
「ああ、そうだな。だが、見透かされていただけなら、まだマシだ。」
「……え?」
「つまり、こういうことだ。実質、この地の経済を握っている闇の勢力に、最初から踊らされていた……そんな可能性すらある。たとえば、あの『秘密鍵のラグ構造』。実は初めからすべてお見通しで、あえて我らを自由にさせて、是認するふりをしていた。そしてタイミングを見計らい……今、こうして量子を解放してきたというわけだ。……わかっているとは思うが、探索とは比べ物にならない正確性が求められるあの量子アルゴリズムでさえ、あれほどまでに量子ビットの数を削減できたということは、それよりも簡単で実用実績すらある量子探索系なんて……つまり、あのラグ構造を量子的な作用で調べ上げることなど、遥かに早い段階で実用化されてしまう可能性があるということなんだ。正直に言うと、そこは、完全に見透かされていた気がしてならない。」
「ちょっと、それは……。」
「ははは。ラグ構造……、そこを期待してたのに、量子アリスちゃんに先を越されそうで悔しい……そんな感じか?」
「まあ……そうなるな。考えすぎかもしれないが……どう思う?」
「いや、考えすぎってことはないぜ。なんといっても、相手は闇だぜ。それくらいは、普通にやってくるよ。実際、他の形でも……すでにこれと似た策略で何度も手を出しているのさ。」
やはり……そういうことか。何とか、あの女神と闇の勢力をぶつけ、互いに力を消耗させた隙を古の大精霊様が突く……それが我らの策だったはずだ。だが……まさか、闇の女神として復活していたのが、あの女神の姉だったとはな……。もはや、どこがこんな異常な構図を引き起こしているのか、再度、徹底的に洗い直す必要がある。




