377, 量子アリスは、わたしの味方……なのよね? それなら、そう、だったら……。でも、違う。これは、そういう問題じゃない。あれから、わたしは少し距離を置いた。冷静になろうとして、感情を抑えて……。
閉じこもっても、何も解決しない。そんなこと、頭ではもう十分わかっている。……わかっているのよ。
でも、それでも……、今は……そうしたいの。量子アリスと話すだけで、また何か出てくる気がして……。その不安に、支配されるの。でも……こんなのが、時代を任された女神?
量子アリスは、わたしの味方……なのよね? それなら、そう、だったら……。でも、違う。これは、そういう問題じゃない。あれから、わたしは少し距離を置いた。冷静になろうとして、感情を抑えて……。
ところが……それを横目に、なんだか、好き勝手やってるわよね。だったらもう、いっそ量子のことは忘れて、そっちに集中すべきなのかもしれない。
でも……そっちはそっちで、量子なんて頭の片隅にもない。ただただ、「こちらとしては、この革新的な女神の通貨をやっていきたい」……そう言うだけよ。言うだけなら、誰にでもできるわよ……。
あのね……何をやるにしても、具体的な戦略って、絶対に必要よね? 「ただやりたい」……それだけを、いつも繰り返すばかりで……その先が、まったく見えてこないのよ。
でも、映し出された現実は違う。量子アリスがこの地に解放されたことで、すべてが……大きく、変わってしまった。まずは、それを受け入れなきゃいけない。ちゃんと、量子に対抗できる基礎を築かないといけないのに……。
今、真っ先にやるべきこと……それは、すでに月単位で、何年も前から量子関連のネタを溜め込んできたであろう勢力が、そのネタの放流を始めたと見られる、そういった広め方への対抗策よ。
……確かに、これが闇よ。ううん、むしろ……テックたちの本性なのかもしれないわね。たとえば、シィーの推論……。あれだって、完成してすぐ公開されたわけではなかった。実際には、もう数年前には出来ていたらしいの。それを「小出し」にして、じわじわと流しておいて……煮詰まったところで一気に出してきた。
つまり、今まさに流れてきているこの量子のネタが、もしその推論の小出し段階と一緒だとしたら……本当に、危ないわ。次に来るのが「量子の本命」だとしても不思議ではない。とにかく、時間がないのよ。
それで、こんな状況下でも……表向きには「今の量子ビット数で、いったい何ができるのか?」なんて論調で、平然と公開されていたわ。……ほんと、これではまるで、量子アリスの指摘通りよ。わたしを照らす提灯の明かりが、やけにまぶしいわ。でも……その光に、わたしの影は濃くなる一方なのよ。
そう。確かに、量子演算に必要とされていた量子ビット数は、大幅に削減された。でも、あの規模の量子ビット数自体……そんなに簡単な話ではないのよ。
……だけれど、それでも、いま手元にあるものの中には、ほんの数年前では考えられなかったようなものが、いくつも存在しているわ。それがあるのよ。だからこそ……油断できないの。




