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373, いま「わざとらしく」見せている量子ビット数の少なさだって、あれは意図的。過小に見せかけて、本当の実力を隠している……その可能性が高いわ。

「それ……で、どうされるのですか? 女神ネゲート様。」


 量子アリスの問いは、もはや揺さぶりではなかった。ここまで続く以上、闇の勢力は本気……そう見るべき。いま「わざとらしく」見せている量子ビット数の少なさだって、あれは意図的。過小に見せかけて、本当の実力を隠している……その可能性が高いわ。


 しかも、これは闇の勢力に限った話ではないわ。たとえば、あの神々でさえ、最近になって量子ビットの公開を始めた。しかも、どうやら従来とは違う「革新的な何か」を備えているらしいって噂も出ていたわ。


 ……そう。量子って、そもそもパワーバランスと強く結びついているからこそ、本来、各勢力は「その本質」を進んで明かそうとはしない。でも……だからこそ、怖い。暗号の観点から見れば……「何が隠されているのか、わからないこと」こそが、最大のリスクにもなる。それなのに……わたしったら。


 実際、大精霊の影響力が非常に強い地域一帯では、量子に関することは全て……完全な機密扱いよ。そんな動きも、たしかに確認されているわ。


 ところで……そのように機密扱いされてきた量子が、もし楕円曲線の深淵に触れられるようになったとしたら? 何もしない? いいえ、それはあり得ないわ。その瞬間こそ、そのような量子はついに公開される時を迎える。もちろんそれは、そんな大精霊の威厳を最大限にまで引き上げるための、強力な「政の道具」としても使われるでしょうね。大精霊自らスピーチを行い、「新たな時代の到来」を高らかに宣言しながら……。


 ああ……そうね。そんな光景が、もう目に浮かぶわ。そう……絶対に、そうなる。あのような大精霊にとって、威厳とメンツは何よりも優先されるのだから。


 そこまで考えると、むしろ今回投げ込まれた「量子ビット数の削減」という情報は、あの機密扱いの量子の現状すら、かすかに垣間見せる……そんな貴重な機会だったと捉えるべきなのかもしれないわ。つまり、それが「似たような段階」なのか、それとも「すでに一歩先」なのか。いずれにしても、今回の件によって、各勢力のおおよその立ち位置が見渡せるようになった。


 ……そう考えることも、きっと大切よね。


 思考を整理したことで、少し落ち着いてきた。そう……量子アリスは、わたしの味方よ。まずは……落ち着かないと。冷静に、ね。


「量子アリス……。次は、何が来そうなの? ちょっと予測してみて。」

「女神ネゲート様……。このような流れから見て、次はまた『自分自身を打ち消し合いながら存在する、あの量子』ですね。それで、より少ない量子ビット数で、さらに高精度……また、そういうアピール合戦が始まると思います。量子同士でも、すでに激しい競争が起きている。そう感じますから。」

「……たちが悪いわね。そうやって、毎回なぜか、わたしにぶつけてくるんだから。」


 やっぱり……そうなるのね。


 でも正直、こんな複雑な競争関係が……全部、わたしに向かってくるなんて。もともと存在していた量子ゲート同士の争いに、今では量子アニーリングまで参戦してきて……。しかも、それぞれが狙っている場所は、ことごとく違っている。……なによ、これ。


 ある量子ゲートは楕円曲線の公開鍵を直接狙い、別の量子ゲートは、署名サイズ削減やアドレス短縮のために犠牲となった狭い探索空間を突いてくる。すなわち秘密鍵のラグ構造を活用するのよ。それだけでも対策は手に余るのに……。


 そこに量子アニーリングが加わる。一撃で採掘のチェーンを破綻させるような、採掘の量子脆弱性を狙い始めた。しかもその領域……当然、量子ゲート側も同じく狙っているわ。


 ……ちょっと整理しただけなのに、もう胃が痛い。


 もう……これ、いったん「さなぎ」にでもなって、全部を……外の騒がしさも、量子の暴走も、こっちに向けられる視線すらも……一度、ぜんぶシャットアウトして。それでようやく、ちゃんと考えられる気がするわ。

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