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370, でも……、こんな仕打ちって、ある? 闇が……わたしの最後の希望までも摘み取ろうとしているのなら、さすがに見過ごせないわ。

 観察しようと意気込んだのは良かったけれど……。でも、これって結局……、簡単には実現できないから安全とされていた 最後の希望すら摘み取ろうとしている。そんな内容に仕上がっていたわ。もちろん、現在の量子アリスに、このような規模の演算はまだまだ困難よ。でも今回の件は、その量子アリスの演算手順、つまりアルゴリズムそのものの見直しによって、あの複雑な演算が極端に楽になってしまったわ。


 ああ、それって、あまりにもよろしくない状況なのよ。もともと量子アリスの発展は、いずれ脅威になると見られていた。それゆえに、このような複雑な量子演算よりも、むしろ「秘密鍵のラグ構造」の方に注意が向けられていたはずよ。


 ……でも、違った。本来なら忘れていてもよかったはずの、複雑な量子演算までもが……その矛先を、わたしに向けてきた。それが……今回の件だった。でも……、こんな仕打ちって、ある? 闇が……わたしの最後の希望までも摘み取ろうとしているのなら、さすがに見過ごせないわ。


「ネゲート……。これで、うまく量子脆弱性をすべて回避して残っていたものまで……全部、奪われてしまったのです。このタイミングで、このような内容を平然と出してくるなんて……正直、驚きを隠せません。つまり相手は、もう本気で間違いないのですよ。」


 フィーの言う通りだわ。秘密鍵のラグ構造をうまく回避していた、あの数少ないチェーン。たしかに、公開鍵が見えているぶん、あの有名な量子アルゴリズムには弱かった。でも、それでも……秘密鍵のラグ構造を攻められるよりは、まだ安全だった。だから、安心していたのに……。……それなのに、そこにすら、容易に突破可能な手法を投げ込んできたのよ。


 もう、わたしに逃げ場なんて残されていない。まるで……静かに、わたしに『消滅の宣告』をしてきたようなものね。


「こんな仕打ちって……。量子アリスは、どう思っているのかしら?」

「女神ネゲート様……。でもこれは、量子アリスでも止められません。これも……新しい時代の一部です。抗うしかありません。そして、女神コンジュゲート様も同じお言葉を選ばれたことでしょう。」


 そうね……。コンジュ姉は、この事態をどう捉えているのかしら。……、気になるわね。


「おーい、ネゲート。毎度のことだけどさ、俺にはさっぱりだ。そんなに深刻なのか?」

「なによ……もう。そうよ、深刻な問題なのよ。簡単にまとめると、闇の勢力は、逃げ道を積極的に塞ぎに来ているのよ。それが、はっきりしてしまったの。」

「逃げ道……って?」

「それは、脆弱性を逃れた暗号……それが最後の逃げ場だったのに……。それすらを狙ってきているわ。ここまでするなんてね……ちょっと、本気で潰しに来てるってことよ。」


 こうなると……シィーの推論による演算時間さえ、もどかしく感じてくるわ。でも、それは時間がかかるもの……わかっている。それでもとにかく、急がなきゃ……。こんなふうにしている間にも、さらに量子ビットの数が削られていたら、もう取り返しがつかないわ。感覚的には……次元削減と同じくらい、容赦なく削ってきているわね。


 だとすれば……、やっぱりダメね。量子演算から得た解が正しいかどうか即座に判断できてしまう暗号モデルは、こうした削減に本当に弱いわ。わかってはいたけど……身をもって思い知らされたわ。

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