363, ここには、希望という概念は存在しない。それこそ提案の機会は与えられるが、それは形だけだ。修正が下されれば、黙って従うしかない。他に選択肢など、存在しない。
元「闇の勢力」の肩書を持つ風変わりな存在が、新たに我らのチームに加わってから、いくばくかの時が流れた。その短い間だけでも、この者は、淡々と素晴らしい成果を積み重ねている。ここでは、連帯責任の原則が重くのしかかる。それが逆に、この者の成功は、我らへの激励へと変わっていった。
責任は連帯して問われる。それならば、栄誉もまた、連帯して受けるのが当然という考えだ。
つまり言い換えれば、我らは古の大精霊様の御目に適ったということだ。ここにおいて、それは最大級の栄誉だ。その影響は確実に波及し、我らに向けられる視線すら、すぐさま大きく変わっていった。
ああ、どうやら我らは、まるで手の届かぬ存在にでもなったかのような、過剰とも言える厚遇を受けている。……正直なところ、悪くない気分だ。
……。
店の戸をくぐった、その瞬間、ざわめきが止んだ。我らが名乗るまでもなく、胸元で淡く光る「権威のバッジ」が、そのすべてを物語っていた。店主は言葉もなく、最上の席へと手を伸ばす。他の客たちは、静かに椅子を引き、一歩下がった。これこそが、ここでの我らの見られ方だ。
そこに並ぶ料理は……、こうでもならなければ、我らの立場では、決して手の届くものではなかった。
「まさか、こんな待遇になるとはね。しかも……元『闇の勢力』の方のおかげでさ。別に、あたしは……時代さえ取り戻せれば、それでよかったんだけど。」
「まあ、細かいことはいい。せっかくの激励だ。ありがたく頂戴しようではないか。」
「そうだね。……こういうときくらい、ぱっと盛り上がらなきゃね!」
その瞬間だった。料理に対し、もし僅かでも不満があるようなら、すべて作り直す所存ですと、そう言われてしまった。だが当然、そんな必要などあるはずもない。目の前のそれらは、疑いようもなく最上のものであった。どうやらその「激励」という言葉に、店の者が過敏に反応してしまったようだ。古の大精霊様からの激励となれば……それも、無理はない。
ここには、希望という概念は存在しない。それこそ提案の機会は与えられるが、それは形だけだ。修正が下されれば、黙って従うしかない。他に選択肢など、存在しない。
それでも、このような待遇は、確かに存在している。ゆえに、理念よりも、我らにとって有利に駒を進められる構造こそが優先されるのだ。
彼女は、「時代さえ取り戻せれば、それでいい」とは言っていたが、この待遇の中では、やはり悪い気はしないのだろう。傍目にも、その様子からは、どこか楽しげな空気すら漂っていた。




