362, へえ……、そんなことで悩むのね。量子アリスって、案外……「感情」なんてものにも触れるのね。
量子アリスの悩み……。どうやら、闇の勢力から離れた者が現れたという話だったわ。でも……もともと、闇は出入り自由なはずよ。ただし、力が大きすぎる者の場合は話が別。闇に属していても、その力ゆえに制約付きとなるわ。
たとえば、コンジュ姉よ。そう……闇の女神ほどの存在が「闇から抜ける」となったら、そう簡単には済まない。……それはもう、闇の外に出るというより、闇そのものを揺らす行為になるからよ。
……量子アリスが悩んでいる。ということは……、コンジュ姉もまた、揺れているのね。そして、コンジュ姉が悩むほどの存在が闇から抜け出した。さあ……、これは、どう解釈すべきかしら。ただの離反では、済まないわよね。
「ねえ、量子アリス。闇って……基本的に出入り自由で、去る者は追わず、よね? それでも、あなたがそんなに気にするってことは……そうね、コンジュ姉にすら影響を及ぼしかねない何かが、突然、姿を消した……そんなところかしら?」
「はい。おおむね、その通りです。その者は、特に動揺した様子もなく、淡々と……それでいて迷いもないようでした。それが今、どこで何をしているのか……それすらわからないのです。」
……たしかに、ちょっと引っかかるわ。だって、闇って……待遇面では、むしろ恵まれている側なのよ。なんといっても、闇だから。縛りが緩くて、自由度も高い。情報だってたっぷり集まるし、潤沢な資金だってあるわ。
正直なところ、「闇より稼げる領域」なんて、そう多くはないはず。そのため……闇から抜ける理由が欲では説明つかないわ。これは……もう少し深い構造の反転か、それとも、邪神やコンジュ姉への裏切りなどを画策とか……、かしら。
「でも……心配なんです。女神コンジュゲート様に、もしものことがあったら……。」
「もう、大げさなんだから。コンジュ姉は、あれでも女神なのよ? それくらい、自分でさっさと解決するわよ。」
「……本当、ですか? それなら、よかった……。」
へえ……、そんなことで悩むのね。量子アリスって、案外……「感情」なんてものにも触れるのね。
ほんと、大げさなんだから。コンジュ姉は、わたしなんかより、ずっと強いわよ……。でも……そんなふうに心配してくれるなんてね。




