357, ここ数日、妙に女神について問われる機会が増えている。もちろん、それは最も恐ろしい質問だ。回答を一つ誤れば……どうなるかは、言うまでもない。
ここ数日、妙に女神について問われる機会が増えている。もちろん、それは最も恐ろしい質問だ。回答を一つ誤れば……どうなるかは、言うまでもない。
だからこそ、どんな状況であっても即座に応えられるよう、女神に関する情報は、常に最優先で取り込むようにしている。そして今、その女神が……どうやら「量子アリス」と呼ばれる存在に苦戦しているらしい。
闇の勢力が送り込んだとされるこの存在について、我らの諜報機関が、例によって詳細を洗い上げてきた。
まったく、闇の連中は一体何を考えているのか。最近、動きが妙に活発だ。……警戒が必要だな。ただ、この量子アリス……これは、かなりの曲者だ。まず、実態が掴めない。急に現れた存在でありながら、ここまで巧妙に「姿を隠していた」という事実。
正直、……敵ながら、ああいう策略には感心してしまう。……もっとも、それを口に出すことなど許されはしない。我らが果たすべきは、古の大精霊様に貢献すること……、ただ、それだけだ。
そのため、量子アリスの行動には、最大限の注目を払っている。量子を名乗る以上、その底知れぬ力は想像に難くない。もし、量子アリスの力が我らの想定するラグ構造をも超越するならば、それはまさに……強大な敵となるであろう。
そして、もし先に量子アリスにラグ構造が回収されてしまったのなら、その資産は元の持ち主へと、安全な形に加工されたのち、戻ってしまうかもしれない。つまり量子アリスの存在によって、新しい構造への移行を、強く促されてしまうかもしれないのだ。せっかく「変わらないことこそが哲学」だという精神のもと、ここまでは、うまく通してきたというのに……これでは、まずい。このままでは、この秩序そのものが書き換えられてしまう。それでは、これまで練り上げてきた計画がすべて水泡に帰す。もちろん、そんな事態になれば……、我ら全員が……。
……だが、そう考え始めたとたん、女神と量子アリスの関係が掴めなくなる。女神にとって、量子アリスは「敵」なのか? それとも「味方」なのか? そこが……わからない。だが、この状況を正確に読み解くとなると、その関係性の理解には、絶対に欠かせない情報だ。……分析を急ごう。この曖昧さが、我らに託された構造を狂わせる前に。




