354, 女神の力を奪い、この地を……この構造そのものを、再構築する。何度も試みられては退けられてきた「聖域」への侵攻。今度こそ、それを成す時だ。
……この好機、逃すわけにはいかない。もはやこれは、威信をかけた戦いなどではない。そんな次元は、とっくに超えている。女神の力を奪い、この地を……この構造そのものを、再構築する。何度も試みられては退けられてきた「聖域」への侵攻。今度こそ、それを成す時だ。
……すべては順調なはずだ。それでも、予定外は多い。例えば、古の大精霊様の影響下から逃れようと活動している「逸脱系の精霊」は、どうしても好き勝手に動きすぎる。粗が目立つのも、当然だろう。
表向きでは「活動拠点を固定化すると資産が集中し、狙われる」などともっともらしく言っているが、実際のところ、理由は違う。……我らの影響下から逃れ、自由にやりたいだけだ。
結果として、あの一帯は……何とも言えぬ、不安定な状態にある。だがまあ、ある程度は……織り込み済みだ。仕方のないことなのだろう。
「女神はどうしておる? 好き勝手にこの地を荒らしていられるなど、もう……そうは長くないと、ここで強く出るべきであろう。」
「はい……、もちろん、そのように動いております。」
「……そうか。ならば、よい。古の大精霊様は、『功績を手にすれば、おとなしくなる』と通達しているにもかかわらず……あやつ、一向に応じる気配がない。……まあ、それも、想定内だ。ならば、女神を潰すしかあるまい。……そうだろう?」
「……はい。仰せの通りでございます。」
就任間もない、古の大精霊様の右腕となられたお方が、定期的にこうして、現場の監査にいらっしゃる。厳しいお方だが、それも当然のこと。我らは、この暮らしを手に入れるために、自ら志願したのだ。
……そう。我らにとって、この暮らしは、まるで「異世界へのチケット」を手にしたようなものだと、よく例えられる。それほどまでに待遇が、何もかも違う。……それは、本当なんだ。
それから「闇の勢力」についてだ。もちろん、彼らも我らの敵である。それは、あえて確認するまでもないことだろう。彼らをうまく乗せて、誘導する。そして、その敵を……あのミームで祭り上げる。いわば、「敵の敵は味方」の法則を活用したまでのことだ。
ただし、それが見抜かれた瞬間に、この構造は壊れる。だからこそ、「そのような力を持たぬ者」が、ちょうどよかったのだ。実際、すべてが問題なく、スムーズで、心地良い。
……やはり、この方は違う。この一連の指揮が高く評価され、古の大精霊様の右腕となられたのも、うなずける話だ。