353, すべてを奪われたあと、なんて。どんなに形が変わっても、その本質は何も変わらない。暗号が解読されていた……なんてことは、相手からすべてを奪い尽くすまで、誰も口にしないのよ。
……やっぱり、気晴らしは大事ね。こうしてこそ、新たな脅威にもしっかり立ち向かえる。……なんて、思った矢先だったわ。ほんのわずかな油断と、その隙が、ラグ的な構造を呼び込む。……それが、暗号だった。最も確かで、最も脆いもの。
さて、リフレッシュは完了。やはり、秘密鍵と公開鍵は最優先の研究対象のようね。また何か、新しいラグ的な構造が見つかった、と。……量子アリスからの報告よ。
やはり、暗号というものは常に最優先で研究されている。そして、観測されているという意識が、不可欠なのね。
それで……ええ、本当に見つかったのよ、また。ちなみに、今回観測されたのはチェーン上では使用されていない鍵だったけど、その構造は……、あの「秘密鍵ラグ」に似た原理で、多数の有効な公開鍵から秘密鍵を逆算できてしまうものだったわ。
正直なところ、こういう流れは用途に関係なく、いつでもどこかで何かが漏れてくると考えておくべきね。
結局……暗号とは、「破られるもの」なのかもしれない。本当の問題は、破られたことに「気づけるかどうか」……その一点だけ。これは、よくある話だった。
破られたと知ったときには、もう争いは終わっていた。つまり、「すべてを奪われたあと」で、ようやく真実を知らされるということよ。
……。すべてを奪われたあと、なんて。どんなに形が変わっても、その本質は何も変わらない。暗号が解読されていた……なんてことは、相手からすべてを奪い尽くすまで、誰も口にしないのよ。そして、凄惨な現実が映し出されて……あとになって、ようやく知ることになるわ。そう、わたしも知っていたはずよね。なぜならそれは、ヒストリーが証明しているからよ。
そして今、もしそれが「秘密鍵のラグ構造」だったとしたら? 狙われているのは……そう。この時代の女神である……わたし自身となるわ。




