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352, また、同志が行方不明になった。ここでは、失敗など到底許されない。慣れたつもりでいても、この息苦しさだけは拭えない。これが、古の掟。あの女神には、きっとわからないだろう。覚悟の重さが、違う。

 また、同志が行方不明になった。ここでは、失敗など到底許されない。慣れたつもりでいても、この息苦しさだけは拭えない。これが、古の掟。あの女神には、きっとわからないだろう。覚悟の重さが、違う。


 どんよりとした、重い空気が漂っている。能天気な女神が実質支配している西とは違い、こちらは……こうした沈鬱な雰囲気に包まれることが、少なくない。ほんの僅かなミスでさえ許されるかどうかは、古の大精霊様の「ご機嫌次第」なのだ。……とくに、そのメンツを潰した場合、それはもう……。


 ……それでも、この高リスクな研究を続ける者たちには、理由がある。「それが誇りだ」と語る者もいる。だが、現実は違う。ただ、この暮らしを……このレイヤーを、手に入れるためだ。他の選択肢では、決して辿り着けない。古の大精霊様に貢献すること。それだけが、唯一の逆転だった。


 ……結局のところ、これも出口戦略の一つだったというわけだ。この暮らしを手に入れ、この地に定着するには……ああいった研究に、志願するしかなかった。成功すれば、称賛と報酬が与えられる。だが、失敗すれば……その先は、想像にすら値しない。


 まったく……あの女神による支配下では、大精霊を破滅させるような失敗……いわゆる「威信を賭けたプロジェクトの頓挫」ですら、責任はわずかに問われる程度、せいぜい昇進が望めなくなるだけだという。住処を追われることもなければ、命のやりとりになるわけでもない。


 ……信じられん。よくそんな「ぬるい環境」で、我らに抗おうなどと考えられるものだ。メンタルだけを取っても、到底及ばぬはずだ。それだけでも、我らのほうが強い。……なのに、なぜか……崩れない。……なぜだ?


 ……まあ、よい。今回は、それが目的ではない。だが……あの女神。あんな様子でも、奴の周囲には……勘の鋭い者たちがいるようだな。まだ、あいつらの通貨には潜り込めていない。……だが、あと少しのはずだ。そこまでは、確実に来ている。その瞬間……あの女神は終わる。


 そして……、時代が反転する。すべてが元通りになるはずだ。

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