351, ほんと、楽しい時間って……どうしてこんなにも、早く過ぎていくように観測されるのかしら。不思議よね。
そういえば、すっかり冷めてしまっていたのよ。だから……、ちゃんと温め直してもらったわ。そう……それは、偉大なる食べ物。それで、この棒状のやつはね、冷めると味が落ちるのよ。でも、大丈夫。うまく温め直せば……外はカリッと、中はホクホク。そんな感じで、ちゃんと蘇るのわ。まるで、構造が整えば、エントロピーだって一時的に巻き戻る、そんな感じね。
この砂浜で、このような物をつまみながら、こんな気持ちになるなんて。ちょっと……これだって、予測不能よ。結局、なんなのかしら。女神すら、どこかで……常に投げられているコインの表か裏かで、ただ動かされているだけなのかもしれない。……それが、「悩んでも、なるようにしかならない」の根源なのかもしれないわね。
まるで、それは「女神ウォーク」ね。でも実際には……その女神ですら、「表」と「裏」、それぞれ一回ずつ動くだけの存在だった。谷に降りたくても、そのまま谷へは移動できない。……それは、許されなかったわ。地道に、一歩ずつ。たぶん、それしか最善って呼べる選択肢はないのよ。
とにかく、偉大なんて、こんな派手な概念を与えられたら……いったい、何が出てくるのかと不安だったわ。でも、これだったなんて。
「あの……。」
「あら、なにかしら?」
「あ、そ、その……、女神様は、特に偏りもなく、お召し上がりになるのですね?」
「えっ? 偏りって……? 何か、あったのかしら?」
「偏り」という言葉に……つい、敏感に反応してしまったわたし。でも、これは……違う。あの偏りではないわよ。
「実は……、大精霊フィー様の袋には、同じ物ばかりが詰まっていて、皆で驚いていたのです。」
「……。フィーが……同じ物ばかりって、それって……。」
それでも、今日のフィーはなかなか良かったわ。あのミームな精霊のディールって、わずかでも油断すると、何を見返りに要求されるのか。ほんと、わからないからね。
ところで、そういえば……コンジュ姉は今、何をしているのだろうか。なんだか、ちょっと嫌な予感がするのよ。それに……さっきから、量子アリスの姿も見えない……。これって……。
そこで、すぐに居場所を突き止めると、そこに映っていた光景はまさに、予想の「斜め上」をいくものであったわ。コンジュ姉もまた、闇でありながら、女神でもある者。そして……その周囲には、確かに多くの方々が集まりつつある気配があった。さらに驚いたことに、あの量子アリスが得意げな表情でそこに立っていたわ。
それで……コンジュ姉が、女神らしい美しい響きで、そっと語りかけていたのよ。優しく、でも確かに、誰かの心を引き寄せるように。
「闇の魅力は、なんといっても……過去を問わず、どんな者でも受け入れることよ。もちろん、その中で成功するかどうかは別の話。そんなに甘くはないわ。でもね……チャンスは、誰にでも巡ってくる。それが闇の本質よ。たとえば、皿洗いから始めて……、頂点に上り詰めた者もいるわ。普通に、ね。それが闇よ。……いかがかしら?」
「みなさま! 女神コンジュゲート様と共に、ここから挑戦してみませんか? すぐにでもご決断いただけます。一声、おかけくださいませ!」
……本当に、抜かりないのね。こんなときまで闇の布教活動を続けるなんて。さすがだわ……コンジュ姉。
そして……なんか、うなだれているこのお方……そう、それはシィーよ。まったく……この時代、酒だって貴重なのに。よくもまあ、そんな量を空けたものね……。
「女神様……。今日くらい……ねえ。別に……いい、ですよね?」
「ちょっと待って? あんた……前に酒で失敗したばかりでしょう? 自然災害で民が苦しんでいた時、片手に酒だったって話……わたし、聞いてるのよ?」
「……それでも……わたしは、何とか……。」
「まあ、いいわ。ただし、ほどほどにしなさいよ?」
「……はい。」
……もう。ほんと、みっともないわ。フィーだって、見てるのに。でも……、今日くらいは、いいか。ほんと、楽しい時間って……どうしてこんなにも、早く過ぎていくように観測されるのかしら。不思議よね。