345, 浮かない顔をしているなんて、珍しいな。まあ、自分で蒔いた種だろ? ……なんてな。でも、こんなもん……なるようにしか、ならないって。
おっと……ネゲートが、浮かない顔で戻ってきた。何があったのか……想像するのは難しくない。そろそろ、休ませてあげないとまずい。一度、倒れてるんだ。あれだって、どう見ても過労だった。
しかも、その疲れがまだ癒えきってない状態で、またあちこちを飛び回ってるんだからな……。
「浮かない顔をしているなんて、珍しいな。まあ、自分で蒔いた種だろ? ……なんてな。でも、こんなもん……なるようにしか、ならないって。そこで、そういえばさネゲートと、まだ行ったこと……、なかったよな。」
「……ありがとう。それで、まだ行ったことがないって?」
「ああ。ちょっとした旅だよ。……まあ、女神や精霊にとっては旅ってほどでもないんだけどさ。」
「えっ……? その様子だと、フィーとは行ったことがあるのかしら?」
「ああ、もちろん。フィーさんどころか……、シィーさんも含めて。なぜか、みんなで行くことになったんだ。」
物珍しそうな表情で、俺をじっと見つめてくる。でも、本当なんだよ。あのフィーさんが、チョコを取り損ねてさ、ごねた話だって、ちゃんとあった。……結局、そんな雰囲気で過ごしてる時間が、一番「まとも」なんだよな。それ以上を望んだ瞬間に……、今、女神としてのネゲートに降りかかっているような火の粉が、容赦なく落ちてくる。
「あ、あの……。量子アリスも、興味あります。是非とも……量子アリスの他、女神コンジュゲート様もご一緒に……?」
「ああ、もちろん。ネゲートの癒しのために行くようなものだからな。」
「えっ……?」
「それで、シィーさんから聞いたぞ。どうやらまだまだ、さらなる演算には時間がかかる見通しらしい。だったらさ、結果が出るまでの間、少し休んだほうがいいよ。」
「そうね……。それは嬉しい提案だけど……。でも、鍵の候補探しとか……。」
「ああ、鍵ね。それなんだけど……実は、俺がまだ何もわからなかった頃、一つ、渡された鍵があるんだ。」
「ちょっと……? それ、あんたが持ってるの?」
「うん。理由はわからない。でも、あるんだよ。ちゃんと、今も手元に。使い道も、意味も……俺にはさっぱり。だから、ずっとそのままになっているさ。」
正直……あれが何だったのか、今でもよくわからない。でも、もし使えるってんなら、持っているべきなのはネゲートだろ。俺では、どうにもできないし……、でもネゲートなら、きっと……わかる気がする。
「つまりそれって、あんたとフィーが、この地で再会して間もない頃の話よね?」
「……えっ? ああ……まあ、そうなるね。」
あれは……そうか。「再会」になるのか……。……ああ。なんか、頭の中がこんがらがってきた。ちょっと……考えるの、やめよう。
「そういうことなのね……。」
「ん? どうしたネゲート? なんか……知ってる感じの言い方ではないか?」
「えっ? ……ちょっとね。わたしだって、混乱してるのよ。因果が……いろいろと、複雑に絡んでしまったみたいで。」
「……、そうか。」
「でも、それだって……わたしが悪いの。あんたを担い手にしたことで、わたしの演算の影響で生じるあれらのサイドエフェクトについて、あんたがすべて引き受けることになってしまった。それが原因よ。」
それか……。それが、絡んでくるのか。たしかに、ややこしい話だ。でも……、この旅で少し整理してみるか。頭を休めて、視点を変えれば……何か、いい策が出てくるかもしれない。
「でもさ。理由がどうであれ……ここで、もし『一つでも』新たな鍵が手に入るのなら……悪い話ではないよね?」
「うん、もちろんよ。なんであんたがそんなものを持っているのかは……正直、わからないわ。でも……使えるのなら、喜んで使わせてもらうわ。」
よし、話は決まったな。旅先でリフレッシュしながら……俺が、あの時預かった鍵を見ていくことにしよう。それで……ああ、そうか。フィーさんは……今は大精霊だった。もう、そう簡単には……。
でも……一つ、良い手がある。どうやらネゲートが、何かに呼ばれてるらしい。なら、それについて行ってみるか。その……偉大なる食べ物ってやつにも、ちょっと興味あるしな。