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344, それらは、優先順位の最適化……そう呼ぶらしい。量子アリスは、それをまるで息をするようにやってのける。俺に押し寄せた膨大な仕事……全部、黙って、静かに、片づけてしまった。

 量子アリスが、俺になついてしまった。……いや、あんな話、普通なら呆れられるはずなんだけどさ。なぜか楽しそうに聞いてくれててさ。


 それで、ちょっとばかり……この、押し付けられた仕事ってやつを、量子アリスにお願いしてみたわけですよ。だって……もうこれ、俺のキャパ超えてるんですって。


 例の出金不能への対応とは違って、こっちはその場でサクッと判断できない案件ばかり。だからこそ、ずっしりとくる。しかも、どうせ俺の裁量で勝手に決められるわけでもなくて、結局は保留にするしかない。


 でもさ、ただ保留すればいいって話でもない。他の仕事との兼ね合いも考えつつ、理由を調整して、うまく配分し、先送りしていかなきゃいけない。要は、複数の事案が同時に絡んできて、その「最適化」みたいなものが求められるわけですよ。


 ……まあ、見事に間に挟まれてる。女神や大精霊と、民に挟まれた俺という存在。なんというか、もう完全にサンドイッチ状態です。でもまあ、状況は理解しています。しょうがないですよね、こればっかりは。


 でもさ……本来、こういう時のためにフィーさんには頼れる精霊がいるはずなんだよ。……何やってんだよ、ほんと。どう見ても、彼らに動いてる気配がまったくない。で、聞いた話だと、フィーさんから何やら重要な計算を任されてるらしいんだ。


 まあ……それも大事なのかもしれない。確かに、計算は計算で、後々響くようなことなのかもしれないけどさ……、でも、こっちは「今この瞬間」に対応しないと回らない案件ばっかりでさ、その全部が先送りになっていくのを、俺が受け止めてるわけ。話がまとまらない。見通しも立たない。……で、困り果てているのは……。


「これってさ、先送りばかりだと……カネが停滞するよね?」

「カネ……、すなわち資金ですか。そうですね……、でも、そのために……こういうときによく見かけるんです。それは『地の掘り返し』と呼ばれています。資金は決して消えない。どんな停滞の中でも……、必ずどこかに眠っています。それが……、これらです。」

「……地の掘り返しって? ……ああ、そういうことね。」

「はい。あれらは、停滞に備えてストックされていたものです。資金の流れが鈍ったとき、そこから再投入されるんです。ただし……欠点もあります。予告されていながら、ずっと放置されている資金源があることです。それらは本来、もっと早く使われるべきものだったのですが……平常時は無視され、停滞期にようやく動き出す。そのため、このような掘り返しには『時間差』がつきものです。」

「なるほどね……。上手くできてるんだな」


 そうつぶやきながらも、量子アリスはそんな話を淡々と続けながら……、押し付けられた仕事ってやつを、ものすごい速さで片付けていく。


「はい。このような処理は、お任せください。もともと……得意分野ですから。量子アリス、頑張ります。」


 それらは、優先順位の最適化……そう呼ぶらしい。量子アリスは、それをまるで息をするようにやってのける。俺に押し寄せた膨大な仕事……全部、黙って、静かに、片づけてしまった。

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