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343, でも、あったのよ。それらは、公開鍵から秘密鍵を演算するための「道具」、その設計図が……なんと、堂々と公開されていたわ。表向きは、教育目的とか、研究用途とか、指定されたパズルを解くとか……。

 ……すべて、受け止める。覚悟はしていたけれど……このヒートマップに、そんな猶予はないわ。早急な対応が必要よ。そして、黒い帽子を深くかぶるイブは、おそらく……知っている。


 なぜなら……わたしが少し調べただけでも、それらしいものが……そこそこ、すぐに見つかったのよ。


 ただし、このヒートマップには一切触れていなかった。でも、あったのよ。それらは、公開鍵から秘密鍵を演算するための「道具」、その設計図が……なんと、堂々と公開されていたわ。表向きは、教育目的とか、研究用途とか、指定されたパズルを解くとか……。でもね、そのくせ見つかった秘密鍵をウォレットに導入する方法まで、丁寧に添付されていたわ。……なによ、これ……。


 それで、気に入ったら寄付って……つまりは、秘密鍵が見つかったら、その一部をお納めください、ってことかしら? ……ほんと、手口がスマートすぎて笑えないわ。


 もちろんそれらはすべて、古典的な演算による道具よ。量子ではないわ……。でも、その設計は……驚くほどに洗練されていた。しかも、手を加えやすいように最初から意識されている……そんな風に、わたしには感じられたわ。まるで……「誰かが使うこと」を前提に設計されたかのように。


 まあ、いいわ。イブが推論によって大きな力を手にする前に……何とかするしかない。……、そんなわたしを、量子アリスが、じっと見つめていた。……もう、いいわよ。わかっているわ。何が言いたいのかなんて……もう、量子なんか、どっか飛んでいったわよ!


「女神ネゲート様。」

「量子アリス……、あなたは、ずっとここにいるのかしら?」

「はい。それは女神コンジュゲート様の意向でもありますが……同時に、量子アリス自身の意思でもあります。」

「……なによそれ?」

「女神ネゲート様。あなた様なら、きっとこの量子アリスの気持ちを汲み取っていただけるはずです。量子アリスがここに至るまでの、境遇を……考えてみてください。」

「……、それって……。」


 ……、わたしは、チェーンや量子にばかり気を取られていた。でも……最も大切な側面を、完全に見逃していた。そうよね……量子アリスも、もとは量子を目的に生まれた精霊。つまり……。


「女神ネゲート様。量子アリスは、量子の精霊です。だからこそ……量子の発展のためなら、どんな研究の材料にもされてきました。正直……、その内容は……。」

「……うん、そうね。そしてそれは、演算の目的を課せられたわたしも、同じよ。終わることのない人の欲望に、ひたすら押しつぶされながら、ただ……演算を続けさせられてきた。今は女神なんて名乗っているけど……所詮、わたしなんて……。」

「女神ネゲート様……!」

「……。」

「でも、あの担い手様のおかげで、自由を手にされたと……伺いました。」

「そ、それは……! それ、フィーが余計なことを言ったのね?」

「はい、それは大精霊フィー様です。そして、量子アリスも……やっとの思いで、解放されました。それで……自由なんて、量子アリスに許されるべきではないのかもしれませんが……、でも……その……。」

「……ううん。わたしは……やっぱり、ダメな女神ね。その最も大切な気持ちすら、忘れていたわ。」

「……。」

「それで……、その様子だと、あの担い手も快諾したのよね? ……まあ、あいつなら、そうするわね。」

「はい! 量子アリスとはまた違った側面ですが……なかなかの境遇をお持ちの方でした。たしか……。」


 それから……、量子アリスは、嬉しそうにあいつの境遇を話し始めたの。まあ……要約すると、信用全力ですべて吹っ飛ばしたって話よ。それだけのことなんだけどね。


 でも……あいつのことだから。どうせ、話すときは相当「盛って」るんでしょうね。ほんとにもう……そういうところ、ある意味見習いたいくらいに上手いのよ、あいつは……。

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